2005 Fiscal Year Annual Research Report
肝虚血・再酸素化障害におけるHMGB-1の役割・代謝処理機構の解明
Project/Area Number |
17591334
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
小野 隆司 島根大学, 医学部, 助手 (50304267)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山野井 彰 島根大学, 医学部, 講師 (70281152)
丸山 征郎 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20082282)
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Keywords | HMGB-1 / 肝虚血再灌流障害 / RAGE |
Research Abstract |
ラット肝虚血・再灌流障害モデルを用いてHMGB-1の体内動態とその役割を中心に検討している。8週齢、雄のSDラットに70%肝虚血を加えた。虚血時間に従い血清中HMGB-1は上昇し、60分間の肝虚血では再灌流後すみやかに血清中HMGB-1は減少し、12時間後には正常化した。90分間の肝虚血では血清中HMGB-1は12時間以後も遷延して高かった。60分の肝虚血では肝組織中HMGB-1は再灌流後12時間まで減少し以後虚血前値に改善した。90分間の肝虚血では肝組織中HMGB-1は低値で遷延した。HMGB-1の免疫染色では、障害前は核にのみ濃染するが、60分間の肝虚血では再灌流後12時間で壊死組織以外の肝細胞の細胞質にHMGB-1は濃染した。HMGB-1を標的とした治療として抗HMGB-1抗体の前投与により30分間前肝虚血再灌流致死モデルで有意にその生存率を改善させ、肝組織障害も類洞うっ血で明らかに改善した。肝虚血時、末梢血にHMGB-1は上昇し、再灌流とともに減少する知見から、定常的に血中に分泌されたHMGB-1は、肝で代謝処理される可能性を推測した。ヨード標識したHMGB-1を尾静脈より投与し、70%肝虚血下で血中からのHMGB-1の消失が遷延した。この結果より、肝臓はHMGB-1処理の重要な臓器であることが示唆された。また、30分間全肝虚血致死モデルで肝虚血前15分から虚血中および再灌流後15分までのHMGB-1吸着カラムを用いた実験では、生存を有意に改善し、肝での組織障害や肺胞の浮腫を明らかに軽減した。これらの一部を第41回肝臓学会総会、第10回エンドトキシン血症救命治療研究会で学会発表し、現在投稿準備中である。新たにブタでの全肝虚血モデルでの実験を準備中である。現在、ラット初代培養肝細胞、肝癌細胞の低酸素暴露実験とともに、現在肝細胞癌切除症例におけるHMGB-1およびその受容体RAGEの発現の意義と予後との関係の検討を継続研究中である。この内容の一部は、スペイン、バルセロナにて欧州肝臓学会(EASL monothematic conference)で発表した。同時にバルセロナ大学、Vall Hebron病院で講演し、臨床での肝移植時の血清中HMGB-1の変化を検討することとなった。
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