Research Abstract |
これまでに経過観察が可能と判断された6mm以下の大腸ポリープ500病変があり,このうち412病変で再度内視鏡検査が実施された。ポリープ径の変化は,不変71%,増大15%,縮小3%,再発見不可11%であった。しかし,癌化例は一例も認められなかった。上記の臨床データは,平成19年6月にセントルイスで開催された米国大腸直腸外科学会(ASCRS)において冨樫一智が口演発表を行い,同時に,Diseases of the Colon&Rectum誌(impact factor2,442)の52巻2号において発表した。この研究の意義は,拡大内視鏡観察により選別された多くの大腸腺腫が増大し癌化のpotentialを有するわけではないことを実証したことにあり,小ポリープの取扱い方針に一石を投じたものと考えられる。遺伝子異常の検討については,これまでに採取した14病変に新たに採取した4病変加えた18病変において,検体を採取し,現在,凍結保存中である。最終的に,"増大した腺腫"と"腫瘍径に変化のない腺腫"からmRNAを取り出し,マイクロアレイ法により比較検討することを目的としているが,現在,予備実験の段階にある。以上に加えて,経過観察後に切除されたポリープのブロック標本を用いて,病理学的異型度の再評価・MIB-1による増殖能の評価に着手した。さらに,"増大した腺腫"と"腫瘍径に変化のない腺腫"を内視鏡的特徴から鑑別する目的に,ピットパターンを含めた内視鏡所見についても検討を開始した。
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