2006 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム科学に基づく肺癌特異的な新規ペプチドを用いた癌免疫療法の確立
Project/Area Number |
17591459
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教授 (50345013)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤澤 武彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (80110328)
伊豫田 明 千葉大学, 大学院医学研究院, 助手 (10302548)
田中 ゆり子 東邦大学, 医学部, 助手 (40396685)
|
Keywords | マイクロアレイ / 遺伝子 / 染色体 / 免疫療法 / 肺癌 |
Research Abstract |
近年、種々の抗原ペプチドを用いた臨床試験が、消化器癌、肺癌、乳癌、卵巣癌で行われるようになった。ペプチドを用いたワクチン療法は重篤な副作用が少なく、ある一定の効果が認められている。しかしその有効率は報告によって差があり、また、症例数が少ないのが現状である。 WT1遺伝子は癌抑制遺伝子としてWilms' Tumorの染色体欠失領域11q13から単離されたが、最近では白血病のみならず肺癌・乳癌・脳腫瘍などの固形癌においても発現が亢進していることが報告されている。さらに、WT1遺伝子のペプチドは癌ワクチンとして臨床応用が始まっている。我々は、肺癌臨床検体を用いてWT1遺伝子の発現について解析を行った。方法はTaqManProbe法によりWT1遺伝子の発現量を測定した。発現解析の結果、WT1遺伝子は肺腺癌患者の67%、肺扁平上皮癌患者の38%、大細胞癌の57%で陽性であった。さらに臨床病理学的解析を行ったところ、WT1発現症例では発現陰性症例に比べリンパ節への転移が抑制されていることが示唆された。 肺腺癌患者、肺扁平上皮癌患者について、WT1遺伝子の発現と再発の関係を調べたところ、肺腺癌患者では、WT1が陽性な患者は陰性な患者に比較して、再発までの時間が早いことが判明した。このことは、肺腺癌患者においてWT1遺伝子は癌遺伝子として機能していると示唆される。これに対して、肺扁平上皮癌患者では、全く逆の結果となり、WT1陽性の患者では再発が有意に抑えられていることが判明した。 肺腺癌で発現が亢進していたWT1遺伝子は、現在癌ワクチンとして臨床試験が始まっている。しかしながら我々の解析では、肺腺癌と肺扁平上皮癌ではその機能が全く異なることが示された。このことは、画一されたペプチドワクチンが、すべての癌患者において坑腫瘍効果を得られない原因かもしれない。癌の免疫療法についても患者に適応した個別化医療が必要と考える。
|