2006 Fiscal Year Annual Research Report
髄芽腫の生物学的特性に関与する発生関連遺伝子群の機能解析
Project/Area Number |
17591509
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
横田 尚樹 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (00273186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳山 勤 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (90313957)
難波 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60198405)
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Keywords | 髄芽腫 / 腫瘍形成機構 / 癌遺伝子 / 発生関連遺伝子 / 幹細胞 / DNA microarray / 定量的RT-PCR |
Research Abstract |
小脳の顆粒細胞由来の脳腫瘍である髄芽腫は近年Wnt signalとShh signalの異常によって発生することが判明したがNotchなどの他のsignalの関与さらにこれらのクロストーク等も見られ、その基盤となる分子機構の詳細は未だ不明である。一方、近年ヒトゲノム計画の進展により、ヒトゲノムデータベースはほぼ完成しつつある。この成果により腫瘍細胞に特異的に発現する遺伝子群を網羅的に解析するDNA microarray systemも実用化されてきた。一方最近腫瘍細胞に中でも一握りの腫瘍幹細胞と言われる細胞群が腫瘍の増殖、転移等に重要な役割を果たしていることが古くから示唆されてきた。我々は過去にヒトの髄芽腫と髄芽腫のマウスモデルを用いて本腫瘍に特徴的に発現する発生関連遺伝子群の同定を行ってきた。これらの遺伝子群の、髄芽腫の腫瘍形成や腫瘍幹細胞の生物学的特性に対する影響を明らかにするために、髄芽腫の細胞株においてCD133陽性細胞の存在をFACSを用いて解析したところ、これらの細胞株の中に少なからず腫瘍幹細胞に相当する細胞群が存在することを見いだした。さらにCD133陽性細胞と非陽性細胞との発生関連遺伝子群の発現の変化をtranscriptで解析すべくCD133陽性細胞をenrichしてmicroarrayを行い、これらの遺伝子群の発現解析を行っている。また我々は最近予後不良の髄芽腫に高発現して腫瘍形成に重要な役割を果たすことが知られているmycと研究代表者が過去に同定し髄芽腫特異的な発現を報告したzic1のmRNAレベルでの発現がin silico解析によりreciprocalな発現パターンを示すことを見いだした。そこでtet repressorを用いた誘導的発現システムを用いたmyc siRNA発現系をコンストラクトして、我々がこれまでに同定してきたものを含め、現在代表的な発生関連遺伝子群の発現の変化をtranscriptと蛋白レベルで解析中を試みている。残念ながら現在の時点では未だに安定細胞株が得られず解析が終わっていない。さらに我々はこれまで神経幹細胞、間葉系幹細胞を用いて髄芽腫、膠芽種等の細胞療法の開発を試みてきたが、最近その過程でラットの間葉系幹細胞の培養系の中に不死化した細胞群が出現してくることを見いだした。この細胞群を継代の上、生物学的な特性を解析したところ、増殖能、移動能等が増加し、細胞死、多分化能が低下しており、さらにmicroarrayを行いてtranscriptの発現変化を解析したところ、幹細胞の増殖に関与するWnt, Shh, Notchなどのsignalの構成分子の発現が増強していた。さらにこれらの変化は定量的RT-PCRや蛋白レベルで確認された。この細胞をラットの脳内に同種移植をしたところ、通常の間葉系幹細胞は生着しないにも関わらず、これらの細胞は生着することが判明した。不死化した間葉系幹細胞群が髄芽腫などの脳腫瘍の細胞療法の担い手として有用であるのか、あるいはその造腫瘍性の存在より危険であるかは今後さらに解析が必要であると考えられる。
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