2005 Fiscal Year Annual Research Report
急性膵炎に合併する多臓器不全の分子生化学的解明と遺伝子治療を含めた治療法の考案
Project/Area Number |
17591606
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松田 直之 北海道大学, 病院, 助手 (50332466)
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Keywords | PAR2 / 急性膵炎 / 遺伝子治療 / Toll-like受容体 / NF-kB / activator protein-1 |
Research Abstract |
セルレインで誘発される急性膵炎において,炎症性受容体やアダプター蛋白の発現の変化を主要臓器で評価した。セルレインの反復性皮下投与により,protease activated receptor 2(PAR2)の発現が肺と心房筋で上昇し,ペプシノーゲンやペプシンの上昇に伴って,肺や心房筋における炎症が増強することを見出した。この過程で,toll-like受容体4(TLR4)の発現が上昇することが肺や腎臓で観察され,PAR2シグナルによりupregureationされたマクロファージ遊走阻止因子(MIF)がTLR4を主要臓器で過剰産生させることを見出した。マウス肺においてCD14,MD2,MyD88,TRAF6,TAK1などの炎症性受容体シグナルに関与する分子の発現は,膵炎誘発の前後で差を認めなかった。本年度の研究では,急性膵炎の誘発により,特にPAR2とTLR4が増加する点を見出した。 セルレインで誘発される急性膵炎の肺ではPAR2が転写段階で産生増加し,この過程でMIFの産生が高まるようである。産生されたMIFはTLR4の発現を気管上皮細胞,2型肺胞上皮細胞,血管内皮細胞に高め,グラム陰性菌のリポポリサッカライド(LPS)の少量静注に対して,NF-kB活性を強く高めた。抗MIF抗体を用いた肺の研究では急性膵炎におけるTLR4の上昇を抑制でき,LPS静注に対するNF-kB活性の上昇を抑制できた。MIFノックアウトマウスを用いた検討でも,急性膵炎後のTLR4の発現上昇が,肺や心房筋で抑制されることがわかり,急性膵炎におけるTLR4の発現上昇の一因はMIFの過剰産生にあると結論された。
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