2008 Fiscal Year Annual Research Report
加齢による全身麻酔薬作用の修飾機序に関する基礎的研究
Project/Area Number |
17591620
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
廣田 弘毅 University of Toyama, 医学薬学研究部(医学), 准教授 (30218854)
|
Keywords | 全身麻酔薬 / 海馬 / シナプス伝達 / 加齢 / シナプス前終末 / GABA |
Research Abstract |
目的:静脈麻酔薬の作用の強さ(potency)は,加齢により変化するとされているが,これは主に臨床において経験的に得られた知見であり,基礎的なエビデンスは乏しい.これまでに我々はラット脳スライス標本を用い,静脈麻酔薬は抑制性シナプス伝達を促進するが,その作用は加齢により減弱する事をin vitroで示した.今年度は加齢による揮発性麻酔薬作用の修飾メカニズムを検討した. 方法:ウィスター系雄性ラットを生後4週以内の若年群(Y群)と20週以上の老齢群(E群)に分けた.ラットを麻酔後断頭して海馬を摘出し,海馬スライス標本(400μm)を作成した.スライスは実験用チャンバー内のliquid/gas interface上に置き,人工脳脊髄液(pH=7.4)および95%O_2/5%CO_2混合ガスを還流した(37℃).シャーファー側枝に電気刺激電極,CA1錐体細胞領域に記録電極を刺入した.海馬白板に第2の刺激電極を置き,今回の検討において開発したPre-pulse train protocolにより抑制性介在ニューロンを活性化し,シナプス前終末からのGABAの放出・枯渇を検討した. 結果:静脈麻酔薬(チオペンタール,プロポフォール)はシナプス前終末からのGABAの放出を促進したが,その作用は加齢とともに減弱した.一方,揮発性麻酔薬(セボフルラン,イソフルラン)の作用は,静脈麻酔薬と比較して小さかった. 結語:静脈麻酔薬は抑制性介在ニューロンのシナプス前終末におけるGABA放出を促進し,この効果は加齢により修飾された.揮発性麻酔薬はGABA放出に対する作用が弱く,その結果,加齢による修飾が少ないと結論した.
|