2005 Fiscal Year Annual Research Report
体外循環後脳障害に対する集中治療室での軽度脳低体温療法の有用性に関する検討
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17591643
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
垣花 泰之 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (20264426)
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Keywords | 脳低体温療法 / 近赤外線分光法 / 脳高次機能障害 / 体外循環 |
Research Abstract |
本研究の目的は、心臓血管外科領域で重要な課題となっている体外循環(特に脳分離循環)後脳障害に対する集中治療室での軽度脳低体温療法の有用性を検討することである。<方法>インフォームドコンセントの得られた体外循環下の開心術予定症例を、脳分離循環を併用した群と併用しなかった群に分け、さらにそれぞれの群を集中治療室での体温管理法に従い、37℃群と35℃群(軽度脳低体温療法群)に分けた。すべての症例は、術中、術後の脳内酸素化状態を近赤外分光法(NIRS)と、内頚静脈酸素飽和度(SjvO2)を用いて連続的に測定するとともに、S-100β蛋白を(1)CPB開始前、(2)終了直後、(3)5時間後、(4)24時間後、(5)48時間後に測定した。脳高次機能は(1)手術前日、(2)手術終了7日後にMMSE検査で評価した。<結果・考察>CPB中の体温は脳分離循環を併用した群で有意に低かった。脳分離循環中の体温低下に伴い、SjvO2値は有意に高値を示したが、NIRSでは有意な変化を認めなかった。これは、急激な低体温時には脳全体(SjvO2)と脳局所(NIRS)の酸素需給バランスに大きな違いが生ずる可能性を示唆したものであり、今後の検討が必要と思われた。S-100β蛋白はすべての群でCPB終了直後に高値を示し、その後は経時的に低下した。集中治療室入室後の脳内酸素化状態(NIRSやSjvO2)やS-100β蛋白値に関しては、各群間に有意差を認めなかった。MMSE検査においても有意差は認めなかった。今回の検討では、集中治療室入室後の軽度低体温療法に関して、脳保護効果を示唆する結果は得られなかった。しかし、今回検討した対象症例数が少なかったことや、脳障害を呈した症例が全く含まれていなかったことなども考慮する必要がある。来年度はさらに症例数を増やし詳細に検討する予定である。
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