Research Abstract |
前立腺特異抗原(PSA)は別名human kallikrein IIIとして精液の再液状化という重要な生理活性を有している.PSAは前立腺線上皮細胞で生成,分泌され,アンドロゲンにより制御される.私たちは,前立腺癌細胞LNCaPを使用し,Activin Aは,細胞増殖抑制と同時にPSAの発現と分泌を増強することは,前回の科学研究費による実験で証明し報告した(Fujii Y, et al. Regulation of prostate specific antigen by activin A in prostate cancer LNCaP cells. Am J Physiol Endocrinol Metab 286:E927-E931,2004).ActivinのPSAに対する効果はアンドロゲンとは独立した経路によるもので,生理的にActivinはアンドロゲンと協調してPSA産生,分泌を制御している可能性が示唆された. 今回は,Activinが前立腺癌細胞を分化誘導するか否かを検討した。 In Vitroの実験 1.アンドロゲン依存性のLNCaP細胞であるが,アンドロゲン非存在下でも十分増殖する能力がある.ActivinAが一定濃度以上であると,LNCaP細胞は完全に増殖抑制される. 2.この場合,LNCaP細胞は,PSA発現を一貫して増強しており,分化誘導されたと考えられる. 2.興味深いことに,LNCaP細胞は,Activin Aに1週間以上触れると,その後はActivin Aなし,かつアンドロゲンを加えた培養液に戻しても増殖はみとめられず,不可逆的な分化誘導がおこったと考えられる. In Vivoの実験 1.ヌードマウスの皮下に,LNCaP細胞を植え,外科的に去勢術を施行.この条件でも同細胞は増殖するがその速度は非常にゆるやかであった.皮下腫瘤の周囲にActivin Aまたは生理食塩水を注射した結果,Activin Aは,in vivoにおいても,同細胞の増殖抑制をきたすことを初めて証明した.ただしその差は大きなものではなかった. 2.この結果が分化誘導か否かを組織学的および免疫染色で検討したが分化の所見は得られなかった. これはコントロール(生理食塩水)群でもIn Vivoでの細胞増殖が非常にゆるやかであることから十分な結果が得られなかった可能性があり,他の細胞株で再検討する必要はあると考えられた. なお,同時に糖質コルチコイドが前立腺癌細胞のVEGF, IL8, VEGF-Cの産生をIn Vitro, In Vivoで抑制し,血管新生抑制,リンパ管新生,腫瘍増殖をIn Vivoで抑制することも証明した.
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