2005 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内情報伝達系を包括的に標的とした新規腎癌治療法開発のための研究
Project/Area Number |
17591690
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中井川 昇 横浜市立大学, 附属病院, 準教授 (00237207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢尾 正祐 横浜市立大学, 医学研究科, 準教授 (00260787)
岸田 健 横浜市立大学, 附属病院, 準教授 (60254166)
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Keywords | 腎癌 / 分子標的 / 情報伝達系 |
Research Abstract |
私たちはVHL遺伝子の異常が起きた際のヒト腎癌細胞内の変化を俯瞰的に観察し、新たな知見をいくつか見出してきました。その中でも注目すべきは、淡明細胞型腎癌の原因であるVHL遺伝子産物の不活性化が、細胞の増殖、形態、運動性などに関わる様々な細胞内情報伝達系を制御するきわめて重要な細胞内分子であるタイプの異なった複数のチロシンキナーゼの活性を誘導しているという点です。今回、私達は肝細胞成長因子の受容体であるMET蛋白というチロシンキナーゼが、VHL遺伝子産物の不活性化によって活性化されることを明らかにしました。さらに、MET蛋白を含む数種類のキナーゼ活性を阻害することが知られているK252aという薬剤が樹立されたヒト腎癌細胞786-0,UMRC-3,UMRC-6の増殖を阻害すること、ヌードマウスにおけるUMRC-3の造腫瘍性を阻害することも明らかにしました。そして、この効果が受容体型チロシンキナーゼであるMET蛋白の活性を抑制することを介していることを実証するために、SiRNAを用いて腎癌細胞におけるMET蛋白の発現を抑制したところ、予想通り腎癌細胞の増殖が抑制されることを明らかにしました。また同時に、手術で得た臨床検体を用いて腎細胞癌組織内におけるMET蛋白の発現、活性化を測定したところ、腎癌組織内では進行度、悪性度に関わらす、常に一定の割合でMET蛋白は高発現、活性化していることを明らかにしました。以上の結果から、MET蛋白はヒト腎癌の発癌において重要な役割を果たしており、腎癌の新たな治療標的となる可能性があると思われ、平成18年度はその詳細について検討を進めていく予定です。
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