2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内情報伝達系を包括的に標的とした新規腎癌治療法開発のための研究
Project/Area Number |
17591690
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
中井川 昇 横浜市立大学, 附属病院, 準教授 (00237207)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢尾 正祐 横浜市立大学, 医学研究科, 準教授 (00260787)
岸田 健 横浜市立大学, 附属病院, 準教授 (60254166)
|
Keywords | 腎癌 / 分子標的 / 情報伝達系 |
Research Abstract |
私たちは腎癌の80%以上を占める淡明細胞型腎癌の原因は癌抑制遺伝子であるvon Hippel-Lindau(VHL)遺伝子の不活性化であることを今まで報告してきました。しかし、VHL遺伝子の不活性化が生じた癌細胞がどのようにして生体内の制御をはずれて自律的に増殖を始め、最終的に癌を引き起こすのか、そのメカニズムの詳細は不明でした。今回、私達はこのVHL遺伝子の不活性化が、肝細胞成長因子(HGF/SF)の受容体型チロシンキナーゼであるMET蛋白の活性化を引き起こすことを明らかにしました。このMET蛋白はHGF/SFによって活性化されると、様々な細胞の増殖を引き起こし、運動性を誘導することが知られていたため、VHL遺伝子の不活性化によってMET蛋白が活性化されることによって癌細胞が自律的に増殖、浸潤を引き起こすのではないかと予測されました。そこでMET蛋白の活性を特異的に阻害する薬剤を腎癌細胞に投与したところ、腎癌細胞の増殖や運動性、造腫瘍性が抑制されることをを明らかにしました。また、本当にMET蛋白による細胞内シグナルを阻害することで腎癌細胞の増殖が抑制されるのか確認するために、SiRNAを用いて腎癌細胞内のMET蛋白の発現を阻害したところ、やはり腎癌細胞の増殖は抑制されました。さらに、実際に手術で摘出した標本を用いて腎癌組織中のMET蛋白の活性化状態を調べたところ、70%以上の腎癌組織中で正常腎組織と比較してその活性が亢進していることを明らかにしました。以上の結果を踏まえると、VHL遺伝子の不活性化が生じると、MET蛋白の活性化が引き起こされ、その結果、腎細胞の自律的な増殖、運動性、しいては造腫瘍性が誘導されることが、腎細胞癌の発生メカニズムの一つと考えられました。現在は、MET蛋白に対する特異的阻害剤が臨床的に腎癌の治療薬となりうるのではないかと考え、その可能性について検討中です。
|
-
-
-
[Journal Article] Vascular cell adhesion molecule 1 predicts cancer-free survival in clear cell renal carcinoma patients.2006
Author(s)
Shioi K, Komiya A, Hattori K, Huang Y, Sano F, Murakami T, Nakaigawa N, Kishida T, Kubota Y, Nagashima Y, Yao M
-
Journal Title
Clinical Cancer Research 12(24)
Pages: 7339-46