2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトパピローマウイルスの感染制御に関与する免疫応答の解明
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17591722
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松本 光司 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 講師 (30302714)
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Keywords | ヒトパピローマウイルス / HPV / CIN / 子宮頸癌 |
Research Abstract |
1.IL-10プロモーターの変異と子宮頸部発癌との関連 代表的なType 2サイトカインであるIL-10のプロモーター変異は592, 819, 1082番目の塩基配列でのみ生じ、変異のパターンによってプロモーター活性が異なることが知られている。amplification refractory mutation system(ARMS)-PCR法によってIL-10プロモーターの変異を検出できることを確認した。平成18年度は倫理審査委員会へ研究申請を行い、その承諾の下に本格的に症例を集めて研究を開始した。症例数がまだ十分ではないため統計的に有意ではないが、子宮頸癌患者と前癌病変患者とのあいだでプロモーター変異の頻度に差がみられた。高分泌型IL-10プロモーターの頻度は子宮頸癌患者に多いことから、Type2の免疫応答が子宮頸癌の発癌ウイルスであるHPVの感染制御に不利に働くと考えられる。さらにデータが集積されつつあり、平成19年度に論文発表することを目指している。 2.日本人におけるHPV16型E6 variantとHLAの解析 子宮頸癌病変より最も検出頻度の高いHPV16型のなかでもE6領域の変異によって子宮頸部発癌のリスクが異なることが知られているが、発癌リスクの高い変異株(variant)は地域・民族によって異なっている。我が国において発癌リスクの高いvariantとその地域特異性の理由を明らかにするため、HPV16型DNA陽性の前癌病変・子宮頸癌患者を対象として、病変から検出されるHPV16のE6領域の変異とHLA(human leukocyte antigen) class IIアリルを調べてコントロール138例と比較した。前癌病変と頸癌から検出されるHPV16 E6 variantの検出頻度の違いから、D25E variant(E6蛋白の25番目のアミノ酸がAspからGluに置換される変異株)ではprototypeと比べて発癌のリスクが2.5倍(95%CI 1.1-5.8)高いと推定された。prototype陽性患者ではDRB1*1501アリル、D25E variant陽性患者ではDRB1*1502アリルの検出頻度がそれぞれ病変の進行に伴い有意に増加した。感染したHPV16のE6領域の変異と感染患者のHLA class IIアリルの組み合わせによって発癌のリスクが高まると考えられた。HIVなどのほかのウイルスで報告されているように、HPVも変異によって特定のHLAを持つ宿主の免疫から排除されにくい仕組みを持っていると推定される。本研究に関しても倫理委員会の承認を得た。今後さらなる症例の集積が見込まれている。
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Research Products
(2 results)