2006 Fiscal Year Annual Research Report
感覚器障害代償における神経積分器の形態的機能的観察
Project/Area Number |
17591786
|
Research Institution | Clinical Research Center, Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
辻 純 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 政策医療企画研究部, 研究員 (30252448)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 壽一 京都大学, 医学研究科, 教授 (90176339)
平海 晴一 京都大学, 医学研究科, 助手 (10374167)
|
Keywords | 前庭代償 / 前庭動眼反射 / 前庭破壊 |
Research Abstract |
一側の前庭破壊後、c-Fos proteinを検索した結果、舌下神経前位核(PrH)において、活性化に左右差が見られた。PrHは、前庭動眼反射(VOR)に必要な神経積分器の存在する場所と考えらていることから、前庭破壊後の代償期に同部に大きな変化が起きているとがわかった。この変化に対する視覚情報の関与を調べるために、前庭神経切断直後からマウスを24時間暗所で飼育し、VORゲインの変化を計測した。対照は、前庭神経切断後、飼育室の通常照明下で飼育した。VOR計測は赤外線によるマウス用眼球運動記録装置を使用し、暗所で行った。画像データを毎秒60コマ取得した後、二値化処理をして、瞳孔を楕円近似して瞳孔の中心を求めて眼球位置を計算した。水平性前庭眼反射ゲインの解析は、眼球運動位置波形を微分して眼球運動角速度を求め、頭部運動角速度は角速度センサで測定した。横軸に頭部運動角速度を、縦軸に眼球運動角速度をとってデータをプロットし、これを直線近似し、その傾きをVORゲインとした。内耳破壊後のゲインの推移を、周波数0.8Hzで最大角速度150度毎秒で測定したとき、対照は術後2日目に最低値を取り、7日目までに急激に回復したが、その後は術前の約7割の値でほぼプラトーとなり、28日目でも、それ以上の回復の徴候はみられなかった。前庭神経切断後24時間暗所飼育したものも対照とVORゲインの術後変化では明らかな差を認めなかった。また、前庭動眼反射に対する視覚情報の関与を調べるために、ノックアウトマウスを用いて温度眼振に対する視覚情報の関与を検索した。前庭由来の眼球振盪は、固視によって抑制されることが知られている。温度眼振の視覚による抑制はvisual suppression (VS) testとして日常臨床で小脳機能評価に応用されている。その機構は副視索路から下オリーブ核を経由して伝えられた網膜誤差情報を小脳プルキンエ細胞が処理し前庭眼反射を制御することによると考えられており、過去には小脳片葉の破壊でVSが消失した等の報告があるが、完全には明らかにされていない。今回我々は、小脳片葉の平行線維とプルキンエ細胞との間に局在するグルタミンδ2レセプター(GluRδ2)をノックアウトしたマウスを用いてVSを測定した。眼球運動は赤外線CCDを用いて測定した。野生マウスでは平均して約90%のVSが見られたが、GluRδ2欠損マウスではVS10%、変化無し、または逆に眼球振盪が増加するものが見られた。これらの結果から平行線維からプルキンエ細胞のグルタミンδ2レセプターを介して伝わる情報がVSに重要な役割を持つことが示唆された。
|
Research Products
(2 results)