Research Abstract |
本研究では,臨床応用に直結した基礎研究を行うという観点から,ヒト耳介の三次元形状と力学的特性を有する軟骨の再生を試み,その長期結果を検討することを研究目的とした.検討項目は肉眼所見,形状計測,力学試験,組織像,RT-PCRとした.本年度(平成17年度)では、まず、ヒト耳介形状を有するscaffoldを生分解性ポリマー(poly (L-lactide-ε-caprolactone 50:50)共重合体)を用いて作製した.続いて、仔ウシの4カ所の軟骨(耳介軟骨、肩関節軟骨、鼻中隔軟骨,肋軟骨)を採取して遊離軟骨細胞を調整し、scaffoldに播種した。その結果,耳介軟骨細胞、肩関節軟骨細胞,鼻中隔軟骨細胞に由来する再生軟骨群において,ヒト耳介特有の複雑な三次元形状が良好に再現され,かつ移植後40週の長期にわたって維持された.一方,肋軟骨細胞に由来する再生軟骨群では,耳介特有の三次元形状は失われ,散在する骨様突起を認めた.組織学的に,突起基部は石灰化軟骨、突起部は骨細胞の存在する骨組織から構築され、成長帯の形成が観察された.これらの結果から,in vivoにおいて,耳介軟骨細胞,肩関節軟骨細胞,鼻中隔軟骨細胞に由来する再生軟骨群は,三次元形状を維持しながら,軟骨の細胞外基質を産生し,正常耳介軟骨群の組織学的特徴に近づくことが示唆された.一方,肋軟骨細胞に由来する再生軟骨群は、形状から耳介軟骨と異なっており,肋軟骨は軟骨採取部位として不適切であることが示唆された. 来年度は,力学的特性を調べる目的で,Instronを用いて再生軟骨の折り曲げ応力を測定する予定である.耳介軟骨細胞,肩関節軟骨細胞,鼻中隔軟骨細胞,肋軟骨細胞の4部位に由来する再生軟骨群における再生軟骨の物理学的性状を検討し,組織学的および力学的検討結果から,再生軟骨を誘導する上で,至適な軟骨採取部位を選択する予定である.
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