2005 Fiscal Year Annual Research Report
短期高糖環境が血管内皮細胞に及ぼす影響:外傷早期の血糖管理の重要性
Project/Area Number |
17591897
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
木下 浩作 日本大学, 医学部, 講師(専任扱) (90260968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 淳 日本大学, 医学部, 助手 (40339320)
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Keywords | 高血糖 / 頭部外傷 / 外傷 / 血管内皮障害 / サイトカイン / Tumor necrotic factor-alpha |
Research Abstract |
実験的頭部外傷モデルに高血糖負荷を与え、脳挫傷部位への好中球浸潤を観察した報告(J Neurotrma 19:681-92,2002)によると、脳挫傷発生早期の高血糖は脳挫傷組織への好中球浸潤を助長するが、興味深いことに脳挫傷作成から4時間もしくは24時間後に高血糖負荷を行ったラットでは、脳挫傷部位への好中球浸潤がコントロールと比較して差を認めない。しかも、挫傷脳組織中のtumor necrotic factor (TNF)-alphaは、外傷作成1-3時間で既に有意に増加し、24時間の経過で低下することが報告された(Neurosurgery 55:416-425,2004)。本研究で、種々の高糖環境(糖濃度100,200,300,400,500mg/dL)で血管内皮細胞を継代培養した結果、血管内皮細胞からの好中球遊走因子であるinterleukin (IL)-8の産生を観察すると、短期間(12-24h)の高血糖でも血管内皮細胞からの好中球遊走因子であるIL-8の産生が亢進することが明らかになった。これまで、慢性高血糖-糖尿病モデルでの血管内皮細胞障害については様々な報告があるが、短期間の高血糖が血管内皮細胞に及ぼす影響についてはあまり検討されていない。重症脳損傷患者の来院時血糖値を測定すると、頭部外傷や脳卒中患者では、重症度と一致して血糖値は上昇することが示されている。この血糖値の上昇は、侵襲反応による高血糖であるため、これまで治療の対象として注目されてこなかった。しかし、短期間の高糖環境で培養された血管内皮細胞を外傷早期に損傷組織で増加するTNFで刺激すると、IL-8の産生が増加することが推定される。外傷早期の高TNF環境下の高血糖が損傷組織への好中球浸潤増加に関与していることから、侵襲後の短期的高血糖も治療の対象となる可能性が示唆された。
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