Research Abstract |
(1)オステオプロテゲリン(OPG)遺伝子欠損マウスを用いての解析:OPG遺伝子欠損マウス(生後5-7週)にOPGを腹腔内投与し,長管骨の成長(軟骨内骨化)に対するOPGの用量依存的な作用を,骨形態計測,光顕・電顕的免疫組織化学(TRAP,I・II型コラーゲン)によって解析した.実験の対照群には,同量の生理的食塩水を投与したマウスを用いた.OPG遺伝子欠損マウスの骨梁骨(海綿骨)構造の経日的変化とOPGの骨代謝への作用を,光顕・電顕的に解析した. 実験の結果,OPG投与は用量依存的かつ有意に骨梁骨の減少を抑制した.また骨梁骨構造を正常に維持する作用が明らかにされた.TRAP陽性の破骨細胞の分布に関しては,OPG投与による有意な作用は認められなかったが,破骨細胞が不活性な細胞構造を示すことが明らかにされた.また破骨細胞のアポトーシスも観察されず,OPGによる骨吸収の抑制が,破骨細胞形成の阻害や細胞死の誘導によらず,細胞機能(骨吸収能)の抑制によることが示唆された.さらにOPG遺伝子欠損マウスの骨組織は骨粗鬆症とは異なった骨量減少の病態を示し,成長軟骨板の配列異常と骨髄中での部分的な骨形成の亢進が確認された. (2)ラット歯槽骨へのOPG局所投与の効果の解析:正常ラットの第一・第二臼歯間に矯正用顎間ゴムを挿入し,近・遠心側への臼歯の移動実験を行なった.移動期間は1週間および2週間であった.ゴム挿入部位に連日,OPGを局所投与し,採取した骨組織を用い,歯の離開度,骨吸収程度,RANKLの発現,破骨細胞の分布と微細構造,液胞型H^+-ATPaseの発現に対するOPGの作用を解析した. その結果,歯の移動に伴う歯槽骨吸収は,OPGの局所投与によって抑制された.特にTRAP陽性の破骨細胞の分布に関する定量形態学的解析では,OPGの局所投与によって破骨細胞数が有意に抑制された.微細構造学的には,破骨細胞は波状縁を失い,不活性な状態にあることが明らかとなった.一方,RANKLの発現に関する免疫組織化学では,OPG局所投与の影響は認められなかった.
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