2005 Fiscal Year Annual Research Report
発生工学的な神経回路トレース法を用いた味覚識別神経回路の構築機構の解明
Project/Area Number |
17591940
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉田 誠 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (50235884)
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Keywords | 味覚 / 脳 / 神経回路 / 味覚受容体 |
Research Abstract |
発生工学的アプローチを用いて、苦味および甘味情報を伝導する神経回路を可視化することで、味覚認識に関与する脳内神経回路基盤を明らかにし、また味覚識別を可能にする回路構築機構を解明することを目的とした。トランスジェニックマウスにおいて、苦味受容体(mT2R5)もしくは甘味/うま味受容体(mT1R3)を発現し、苦味もしくは甘味/うま味を感知する味細胞に、それぞれ特異的にGFP融合味覚受容体とシナプス間を移動するトレーサータンパク質(tWGA-DsRed)を発現させ、特定味覚受容体(苦味受容体もしくは甘味/うま味受容体)の口腔内での発現パターンをGFP融合味覚受容体の蛍光検出により明らかにした。mT2R5-GFPは舌後方部と口蓋の味蕾中味細胞と、鼻腔と喉頭のsolitary chemoreceptor cellsに発現し、mT1R3-GFPは舌の前後双方の味蕾中味細胞と、口蓋の味細胞に発現していた。生後6週齢マウスにおいては、成熟マウスに比較しmT1R3-GFPを強発現する味細胞が多数存在した。また苦味もしくは甘味/うま味を伝導する脳内神経回路を特定味細胞から経シナプス性に移行したtWGA-DsRedの脳内局在を可視化することにより明らかにし、苦味および甘味/うま味を伝導する神経回路網を比較した。本研究ではtWGA-DsRed標識ニューロンの脳内局在を前頭断連続切片から検出し、前頭断連続切片画像を三次元立体再構築することにより、脳内の非常に広い領域で構成される特定味覚伝導路の三次元的空間配置を可視化した。延髄弧束核・橋結合腕傍核・視床後内側腹側核において、mT1R3発現味細胞からの入力を受けるニューロン群は、mT2R5発現味細胞からの入力を受けるニューロン群に比べ、より前方に配置していた。また大脳皮質味覚野と扁桃体においては、部分的重複と分離がみられた。口腔内味細胞に苦味刺激を行うと延髄弧束核の特定ニューロン群においてc-Fosの発現が誘導されるが、延髄弧束核のc-Fos発現細胞は、mT2R5を発現する味細胞から移行したtWGA-DsRedにより標識されるニューロンのmedial側に近接して存在した。観察された苦味と甘味の情報を伝導する脳内神経回路の差異は、味覚認識を可能にする細胞基盤の一端を示していると考えられた。
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