2006 Fiscal Year Annual Research Report
発生工学的な神経回路トレース法を用いた味覚識別神経回路の構築機構の解明
Project/Area Number |
17591940
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
杉田 誠 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (50235884)
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Keywords | 味覚 / 脳 / 神経回路 / 味覚受容体 |
Research Abstract |
本研究ではトランスジェニックマウスの作製を通じて、苦味受容味細胞もしくは甘味/うま味受容味細胞に、それぞれ特異的に経シナプス性トレーサー(WGA-DsRed)を発現させ、味細胞から経シナプス性に移行したWGA-DsRedによって標識されるニューロンの脳内局在を可視化することにより、苦味および甘味/うま味情報を伝導する脳内神経回路網を解明し、味覚識別を可能にする神経回路の構築様式を明らかにすることを目的とした。特定味細胞から経シナプス性に移行したWGA-DsRedにより蛍光標識されるニューロンの脳内局在を前頭断連続切片から検出し、その前頭断連続切片画像を三次元立体再構築する方法を用い、脳内神経回路の各種発達段階・成熟段階において、苦味・甘味情報を伝導する神経回路を全脳領野において解析した。2〜12ヶ月齢マウスの解析において、甘味/うま味受容味細胞から移行したWGA-DsRedにより標識されるニューロン群は、延髄弧束核・橋結合腕傍核・視床後内側腹側核・大脳皮質味覚野中で、苦味受容味細胞からのWGA-DsRedにより標識されるニューロン群に比べより前方に配置していた。甘味/うま味受容味細胞から移行したWGA-DsRedにより標識されるニューロンは、2〜2.5ヶ月齢マウスにおいて、reticular formation-periaqueductal gray-superior colliculus-inferior colliculus-deep mesencephalic nyclei領域に散在することが観察された。2〜2.5ヶ月齢マウスの大脳皮質味覚野において、甘味/うま味受容味細胞から移行したWGA-DsRedにより標識されるニューロンは、12ヶ月齢マウスの大脳皮質味覚野内の標識ニューロン群の一部であり、その最前方領域に存在するニューロンに相当することが観察された。ゆえに苦味受容味細胞からのWGA-DsRedにより標識されるニューロンとは分離した領域に存在するニューロンが、選択的に甘味/うま味情報を伝導する神経回路を構築することが示唆された。
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