2007 Fiscal Year Annual Research Report
歯痛に対する交感神経の末梢修飾機序の解明-とくに疼痛制御への応用-
Project/Area Number |
17591984
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
笹野 高嗣 Tohoku University, 大学院・歯学研究科, 教授 (10125560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 由美子 東北大学, 病院, 助教 (30235866)
庄司 憲明 東北大学, 病院, 講師 (70250800)
佐藤 しづ子 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (60225274)
飯久保 正弘 東北大学, 大学院・歯学研究科, 講師 (80302157)
遠藤 康男 東北大学, 大学院・歯学研究科, 大学院非常勤講師 (50005039)
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Keywords | 歯痛 / 交感神経 / 歯髄炎 / 疼痛制御 / WGA-HRP順行性標識 |
Research Abstract |
交感神経は痛みと密接に関与し痛みを修飾することが知られている。本研究では歯痛の最大の原因となる歯髄炎について、痛覚線維と交感神経の相互作用について研究を進めている。交感神経の神経終末分布を検索する方法としては、これまで交感神経の神経伝達物質であるニューロペプチドY(NPY)を免疫組織化学的に染色する方法が用いられていた。しかしながら、NPYは、交感神経以外に副交感神経や感覚神経にも含まれることが報告されており、交感神経のみを選択的に染色する方法としては適切ではない。本研究で用いたWGA-HRP順行性標識法は、神経の軸索流を利用する神経回路標識法であり、神経の中枢側(主に神経節)からトレーサーとしてWGA-HRPを注入し、末梢側である神経終末を直接標識する選択的染色法である。この方法は、未だ世界に類をみない新たな手法である。 今年度は、最終年度として、WGA-HRP順行性標識法を用いて正常歯髄および窩洞形成を行った歯髄における交感神経の動態について検索した。その結果、 1.正常歯髄において、(1)交感神経終末の分布は三叉神経終末と比較し非常に少ないこと、(2)交感神経の神経終末は象牙芽細胞体に近接して存在すること、(3)象牙細管内の象牙芽細胞突起には交感神経の神経終末は存在しないことが示された。 2.窩洞形成により惹起された歯髄炎において、交感神経終末は正常歯髄群に比べて有意に増加していた。以上の結果から、歯髄炎において交感神経が発芽することが明らかとなり、この発芽は痛みを修飾している可能性を示唆している。
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