Research Abstract |
臨床で多用される接着システムについて,その詳細が不明であったハイブリッド層の機能と質を分析するとともに,象牙質に対するレジンの接着機構の全容およびその耐久性に関与する要因を明らかすることを目的として検討を行う。 市販のワンステップ接着システムを用いて製作された試片について,その象牙質接合界面について顕微レーザーラマン分光分析装置を用いて,象牙質の脱灰程度とこの脱灰層へのレジン成分の浸透性を製品別に評価,検討する。次いで,歯質接着性試験ならびにフィールドエミッション走査電子顕微鏡を用いた接着界面の形態的観察を行うことによって,ラマン分光分析の考察材料とし,それぞれの接着システムにおける歯質の脱灰,レジン成分の浸透性およびレジンモノマーの濃度傾斜性を比較,これを詳細に検討する。さらに,広く工業界あるいは医学領域でも使用されている超音波パルス法に着目し,本法を用いてレジンと歯質との接合界面における超音波特性を非破壊的に測定することによって,弾性率を求める。これによって,ハイブリッド層,脱灰象牙質およびその部へのレジン浸透性,すなわちハイブリッド層の機能と接着性との関係を明らかにする。 接着システムに付属する歯面処理材の処理時間を短縮あるいは延長することによって,ハイブリッド層の厚さを意図的に変化させた試片を製作し,その象牙質接合界面の分光学的検討および接着強さ試験などを行った。その結果,ハイブリッド層,脱灰象牙質およびその部へのレジン浸透性,すなわちハイブリッド層の機能と象牙質接着性との関係には明らかな相関性は認められず,機能性モノマーの化学的反応が大きな役割を果たしている可能性が示唆された。
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