Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高久田 和夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (70108223)
門磨 義則 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教授 (00092403)
渡辺 昭彦 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助手 (30126263)
小山 富久 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助手 (70361714)
石綿 勝 東京医科歯科大学, 歯学部, 講師 (70292985)
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Research Abstract |
我々は,高齢者の新規入れ歯の設計コンセプトとして,粘膜への刺激を和らげることを優先させ且つ適度の咀嚼力をも確保できることを念頭において,新規軟質レジン床義歯の開発を始めた。本研究では,その軟質床用レジンとして,メタクリル酸2-エチルヘキシル(EHMA)-メタクリル酸メチル(MMA)共重合体(重合開始剤:過酸化ベンゾイル(1wt%))に注目し,それらの組成比を変えて,引張,圧縮力学的特性を調べ,義歯床用レジンとしての有効性について検討した。 その結果,圧縮試験による応力-ひずみ線図を観察すると,MMA単体は,従来の床用アクリリックレジンとほぼ同じ力学特性をもつと考えることができ,これとEHMAとの共重合体とすると,圧縮弾性率,最大応力は次第に小さくなる。このとき,EHMAの組成比を大きく取ると,小さな圧縮荷重でも大きな変形挙動を示す特徴がある。すると,顎堤が高度に吸収されてしまった患者では、顎堤粘膜の菲薄化に伴って、義歯のわずかな移動や支持圧力により義歯床下粘膜の疼痛や褥瘡性潰瘍が頻発するようになるが,このような変形挙動は,従来の床用レジンとは異なる粘膜とのソフトな支持圧力が考えられ,疼痛や褥瘡性潰瘍を生じさせ難い効果が期待できる。 EHMA-MMA共重合体の弾性率と圧縮強さは,EHMAの組成比を大きくするほど,直線的に大きく低下した。しかし,材料は最大応力を超えた範囲でも分離破断することなく,除荷すると,元の寸法にほぼ回復する特徴を示した。一方,引張特性は,圧縮特性に比べて,強さと弾性率が小さくなる傾向を示した。 以上の結果から,EHMAの圧縮特性に関する効果が期待でき,義歯粘膜側への応用が示唆された。すると,硬質/軟質レジン複合化床義歯への展開が今後の設計の指針となる。
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