Research Abstract |
【目的と経過】 変形性顎関節症(OA)の抗サイトカイン療法としてII型腫瘍壊死因子可溶性受容体の顎関節腔内注入療法の実用化を目的に,完全ヒト可溶型TNFα/LTαレセプター製剤(エタネルセプト)を用いて,炎症環境下の軟骨細胞からのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)産生の抑制効果とラット変形性膝関節症モデルを用いた治癒効果の検討を行った. 【方法】 新生児ラット膝関節より採取した関節軟骨細胞を初代培養し,TNFα,IL-1β各単独,同時刺激後にエタネルセプトを培養液に加え,mmp3,9,13発現変化を経時的にreal time PCR法にて定量した.また,ラット変形性膝関節症モデルの膝関節腔内へエタネルセプトを局所投与し,組織学的に検討した. 【結果と考察】 各単独,同時刺激で24時間後のmmp3,9,13発現は無刺激に比べ有意に増加し,同時刺激では単独刺激に比べ,いずれのmmp発現量も大きく増加した.エタネルセプトは,TNFα単独,同時刺激で,いずれのmmp発現も抑制したが,IL-1β単独刺激では,抑制効果を示さなかった.特にmmp3に関しては,TNFα単独刺激24時間後に,mmp9に関しては,TNFα単独刺激12,24時間後に,エタネルセプトによりその発現が有意に抑制された.以上から,エタネルセプトはTNFαが関与する軟骨細胞でのMMP3,9,13産生誘導を抑制することが示唆された.また,IL-1β単独刺激の場合,エタネルセプトによる抑制効果はみられなかったが,相乗効果を示すTNFαとの共存環境では,抑制傾向を示すことから,滑膜炎を伴うような炎症反応の強いOAでは,エタネルセプトの効果が期待できるかもしれない.また,動物実験では,エタネルセプト投与群と非投与群との間に有意な差は認められなかったが,変形性関節症モデルの妥当性も含めて今後さらなる検討が必要と考える.
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