Research Abstract |
咬合の異常感覚症(咬合に病的な問題が認められないにもかかわらず咬合の違和感を訴える患者)の客観的な評価法を開発することを目的とし,臨床診査,心理学的検査(心理テスト:(1)GHQ60,(2)POMS短縮版),上下顎中切歯間における厚さ弁別能試験[開口負荷なし,開口負荷あり]を実施した.今年度はおもに対照となる基礎データの収集のために,健常者を対象に実験を行った. 被験者には20歳代の健常有歯顎20名,および高齢者20名(65〜78歳)を選択した.臨床診査,心理学的検査により異常が認められなかった健常者を対象に,厚さ弁別能試験[開口負荷なし,開口負荷あり]を行った.厚さ2,5,10mmのスタンダードブロック(SB)とSBから±0.25mmずつ厚さの異なる12種類のテストブロック(TB)を使用し,SBより「薄い」TBを「厚い」,「厚い」TBを「薄い」と答えた場合を誤答とし,誤答数を算出した.20代の健常有歯顎者では,2,5,10mmのSBにおいて,10mmの誤答数は2mmの誤答数よりも有意に多く,また,厚いブロック群の誤答数は薄いブロック群よりも有意に多かった.この傾向は高齢者においても変わらなかった.一方,開口負荷を与えた場合,20代の健常有歯顎者では開口負荷なしの場合と同様の傾向を示したが,高齢者では開口負荷の影響がより大きいこと(最大開口5秒間の負荷で2mmの誤答数と10mmの誤答数に有意差なし;最大開口1回の負荷で2mmの薄いTBにおいて誤答数が有意に増加)がわかった.現在咬合の異常感覚症患者の被験者数を増やしつつ実験を進めている.以上の研究成果の一部は,Prosthodontic Research and Practice 2005;4(1):16-22に掲載済であり,今後第84回IADR,第1回国際顎関節学会ならびに第19回日本顎関節学会学術大会にて報告する.
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