Research Abstract |
これまで臨床において歯科用陶材は,審美性はもちろんのこと表面品位を高める目的で,通常は仕上げ研磨加工後に,最終仕上げとして,グレイジング(艶焼き)という熱処理が行われてきた. しかし,1992年にFairhurstらにより,陶材の強度に及ぼすグレイジングの効果を強く否定する報告が行われた.研究代表者らは,比較実験を行い,実験で使用した4種類全ての陶材の強度についてグレイジングの効果を否定することができないことを明らかにした.これより,陶材に対するグレイジングの有効性の議論が今後も必要であることと,陶材のような硬脆性材料においては,加工面品位が強度に大きな影響を及ぼすため,グレイジングとならんで仕上げ研磨加工も,今後臨床においてますます重要になることを結論づけた. 本研究においては,歯科技工用砥石開発に関する新しい試みとして,これまで固定砥粒としてはほとんど使用例のない多結晶ダイヤモンド砥粒を用いた.また,比較のため,単結晶ダイヤモンド砥粒も用いた.砥石については,臨床応用を目的とした仕上げ研磨加工用のゴムボンドダイヤンド砥石(粒度番号#3000)を製作して,歯科用陶材を研磨し,グレイジング面と同等の滑沢な面を得ることを目的とした. 本年度は実験装置の改良,調整を行いながら研究を進めた.砥石に関しては,結合材にクロロプレンゴムを用いたゴムボンドダイヤモンド砥石を製作した.実験は,試験片の研磨面に,臨床における咬合調整で得られる研削面の表面粗さを想定し,初期粗さを付与した.次に,ゴムボンドダイヤモンド砥石により,粗さを付与した試験片の研磨加工を行い,表面粗さおよび研磨量を測定した.研磨速度,研磨圧力を変化させ実験を行った.また,研磨面は光学顕微鏡,電子顕微鏡およびAFMで観察した.得られた表面粗さについてt検定を行った. 本砥石で歯科用陶材を研磨した結果,歯科用陶材のグレイジング面と同等の表面粗さおよび滑沢な面を研磨加工で得ることができた.本砥石は,歯冠修復物の咬合調整後における初期接触部の最終仕上げ研磨加工,ならびに陶材の焼成後にグレイジングを行わずに研磨加工のみで仕上げるための砥石に使用でき,臨床において極めて有効と考える.
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