Research Abstract |
本年度は実際のヒト口腔内における溶出の実態をシミュレートするために,In添加濃度をそれぞれ10%,15%,20%のAg-In合金,2%,4%,6%Ag-Pd-Au-Cu-In合金および陶材焼付用金合金粉末0.5gと,溶解速度を増加させる目的から粒子径1〜2μmのダイアモンド粉末0.5gを,それぞれ回転式の攪拌溶解装置に入れた.DMEMを1mL注入し1時間攪拌後,マウス由来のES細胞を用いたEST法によって調べた.その結果,Ag-In系のみ発生毒性の可能性が示された.そこで,実際のヒト口腔内における溶出の実態をシミュレートし,その発生毒性データを得る目的で,臼歯咬耗によってInが溶出すると考えられる,Ag-In合金,Ag-Pd-Au-Cu-In両試作合金について,それぞれIn量が最も多く含む合金について検討を行った.すなわち,正常な口腔内を印象した硬質石膏製上下顎模型の左右臼歯部4-7を支台歯形成し,両試作合金を用いて全部鋳造冠を作製した.冠表面を最終研磨し,咬合器と電動の減速モータを用いた自作咬耗試験機の支台歯模型に合着した.なお,滅菌したシリコーンゴム被膜で冠部を除いて介在させ,内部に容積比10%血清を添加したDMEM 50mLを注入した.直ちに室温で,咬合器の左右顆頭をそれぞれ卵円形のカムによって1秒間隔で押すことで人工歯をミリングするような咬耗運動を6時間ならびに12時間にわたって加えた.その結果,ICPSによる測定結果から両合金からの組成金属イオンのIn,Ag,Pd,Cuの溶出量はいずれも1ppm以下であることが判明した.また,Ag-Pd-Au-Cu-In試作合金はAg-In試作合金よりも発生毒性が弱いことが示唆された.合金におけるデータは化合物由来のイオンによるデータとは異なることが明らかとなった. 以上の諸データに基づいて,継続2年度目には残る研究課題について研究を進め,完成させたい.
|