2006 Fiscal Year Annual Research Report
鍼刺激が内分泌・自律神経系および脳機能におよぼす影響
Project/Area Number |
17592076
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
丹羽 均 大阪大学, 大学院歯学研究科, 教授 (30218250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉村 光隆 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助教授 (90244954)
廣瀬 陽介 大阪大学, 大学院歯学研究科, 助手 (20362684)
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Keywords | 鍼 / 自律神経 / 血圧-心拍ゆらぎ / 交感神経 / 副交感神経 / ストレスホルモン / クロモグラニンA |
Research Abstract |
<目的>経穴への鍼刺激が、自律神経系、およびストレス関連物質であるクロモグラニンA(CgA)にどのような影響を与えるかを検討した。 <方法>健康成人10名を対象とし、鍼刺前後の収縮期血圧(SBP)と心拍数(HR)を連続的に測定した。得られたデータより、血圧-心拍ゆらぎを算出した。SBPゆらぎの低周波成分(0.04〜015Hz;SBP-LF)を交感神経系活性の指標とし、HRの高周波成分(0.15〜0.5且z;HR-RF)を副交感神経系活性の指標とした。また同時期の唾液を採取し、CgA濃度を測定した。鍼刺激としては、合谷、曲池にステンレス鍼を刺入し、30分間通電刺激を加え、その後直ちに抜鍼した(経穴群)。さらに経穴以外に刺入し、同様に通電刺激した場合(対照群)とも比較した。 <結果>HRとSBPは経穴群、対照群とも、刺激前値に比べて、刺激中と刺激後に有意に減少した。SBP-LFも、両群において、刺激中と刺激後に有意な低下を示した。一方、HR-HFは両群とも、鍼刺激中と刺激後に有意に増加した。CgAは、経穴群では刺激前後でわずかに増加したのみであったが、対照群では、刺激中有意に増加し、刺激終了後も増加傾向(p=0.051)を示した。 <考察>本研究の結果より、鍼刺激は交感神経系活性を抑制(SBP-LFの低下)し、副交感神経系活性を亢進(HR-HFの増加)させ、その結果SBPの低下、およびHRの減少を引き起こすことが示された。これらの変化は、鍼の刺激部位が経穴であるか、それ以外の部位であるかには影響されなかった。CgAは唾液中に分泌されるストレス関連物質であり、精神的ストレスにより分泌が増加するといわれている。本研究の結果では、経穴への鍼刺激は精神的ストレスとはならなかったが、経穴以外への刺激はCgAの増加が示すように、精神的ストレスとなりうることを示唆している。ただし、前述したように自律神経活性の変化からは両者の違いは明らかではなかった。
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