2007 Fiscal Year Annual Research Report
交感神経刺激に起因して生じる唾液分泌低下のメカニズム
Project/Area Number |
17592116
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
中川 洋一 Tsurumi University, 歯学部, 講師 (90148057)
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Keywords | 唾液分泌 / 交感神経 / 副交感神経 / アゴニスト / 細胞内シグナル伝達 / アクアポリン |
Research Abstract |
本研究の目的は、交感神経と副交感神経の相互作用の検討である。交感神経刺激が副交感神経による唾液分泌抑制を動物実験によって確認し、そのメカニズムを細胞内シグナル伝達の面から検討した。 平成17年度は、アゴニストを用いた動物実験により、ピロカルピン(ムスカリン受容体刺激薬)単独刺激に比較して、ピロカルピン+イソプロテレノール(βアドレナリン受容体刺激薬)刺激は唾液分泌が優位に低下することが示された。このメカニズムを探るため、アゴニスト刺激後の唾液腺組織の二次元電気泳動によってタンパク発現の変化の解析をおこなったが、有意な変化はみられなかった。 この結果を踏まえ、平成18〜19年度は、βアドレナリン受容体刺激がムスカリン刺激の細胞内伝達にdown regulationするかどうかの細胞内シグナル伝達の検討をおこなった。 細胞内カルシウム濃度の変化:カルバコール刺激では濃度依存的なカルシウム濃度の上昇が認められたが、これらはイソプロテレノールにより抑制されなかった。したがって、イソプロテレノールによる唾液分泌抑制は、カルシウム濃度を低下させるためではないということが分かった。 ATP濃度の変化:Naポンプ(Na+/K+ATPase)活性、ATP依存性のNa+/K+/C1-cotansporter活性などにATP濃度の変化が影響するか否かを検討したが、イソプロテレノールによる細胞内ATP濃度の減少は認められなかった。 次に、アクアポリン5(AQP-5)の局在の変化を免疫組織学的に検討した。ピロカルピン刺激によってAQP-5は細胞膜に強く染色されるが、ピロカルピン+イソプロテレノール刺激はその局在が不明瞭になった。アデニレートサイクレースの阻害薬によってその局在の変化が回復するとともに、唾液分泌量も改善した。 以上のように、唾液腺細胞内において、交感神経刺激が副交感神経による唾液分泌抑制するメカニズムが存在することが示された。
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