Research Abstract |
本年度の研究としては,まず,高濃度濃縮PRPの調製方法の検討を行った.当初の実験計画では約100倍の濃縮を目指していたが,操作途中の活性化の問題や,最終濃縮PRPの容量の問題から20〜30倍程度に濃縮したPRPが操作上も良好であることがわかった.すなわち,採取したイヌ末梢血10mlに1mlの抗凝固薬を添加した状態で遠心分離し,PRPの最終調製量を100μlとした.その結果,血小板濃縮率は平均20倍程度に濃縮された.また,遠心分離条件により,回収される血小板数に影響を与えるか検討を行うこととした,2回法の遠心分離のうち,1回目の遠心分離の条件を300×g,500×g,1000×g10分間で遠心分離の条件を変えて,血小板収量に影響を与えるか検討を行った.その結果,300×gで最も血小板収量が高いことが明らかになった. 次に実験動物を用いて高濃度PRPの創傷部位における作用の調査を行った.すなわち,イヌ下顎第3,第4前臼歯近心根部周囲に2壁性骨欠損を作製し,片側の骨欠損に高濃度PRPを移植し,対側は何も移植を行わず,対照群とした.実験観察期間中,術部の感染,排膿等の異常所見は認められなかった.また術部歯肉の炎症や形態,色調の異常は認められなかった.組織形態計測では,高濃度PRP移植により,新生セメント質の形成促進と上皮の深部増殖抑制作用が認められた.骨組織に関しては,高濃度PRPの移植により,形成が抑制される傾向を認めた. 以上の結果から,高濃度濃縮PRPは,セメント質の再生と,上皮組織の深部増殖を抑制し,新生の結合組織性付着を促進させる可能性が示唆され,歯周組織再生効果があると考えられた.しかし,骨組織再生は,至適血小板濃度,または至適な成長因子濃度が存在することが推察された.
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