2006 Fiscal Year Annual Research Report
歯槽骨吸収における揮発性硫黄化合物の役割に関する研究
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17592191
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
今井 敏夫 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教授 (90120617)
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Keywords | 硫化水素 / 骨芽細胞 / RANKL / 骨前駆細胞 / 分化 / 骨吸収 |
Research Abstract |
骨のリモデリングは骨芽細胞と破骨細胞の機能によりダイナミックに行われている。破骨細胞の分化機能はRANKL発現が必須であることが知られている。そこで硫化水素がヒト骨芽細胞のRANKL発現を誘導するか否かをウエスタンブロッティングにて検索した。その結果、硫化水素の濃度を変化させてもRANKL発現を検出することは出来なかった。 そこで次に硫化水素の正常ヒト破骨前駆細胞(Cryo OCP)の分化、機能への影響を検討した。Cryo OCPはM-CSF、Soluble RANK ligand(RANKL)を含む分化馳下で、7日間培養後20〜30%の破骨細胞へと分化する。この破骨細胞は多核の細胞となり酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ染色陽性(TRTP)として認められる。そこでCryo OCPにH_2Sを24時間作用させ、さらに6日間培養した。H_2S無処理ではTRTP細胞数が58.9±5.1cells/2mm^2(Mean±SD)であった。一方、1.0ng/ml H_2S処理では27.6±6.3cells/2mm^2を示し、無処理群の47%と低値を示した(P<0.001)。無処理群では赤色を呈したTRTP細胞が多数観察され、これら細胞はいずれも多核の細胞であった。その形態はプレート底面に偏平状に広がり、底面に付着していた。一方、1.0ng/ml H_2S処理群では、TRTP細胞は無処理群に比べTRTP細胞数が顕著に少なかった。さらに、TRTP陽性を示した細胞でも核の数が2個程度にとどまっていたものが多数認められた。 次にH_2S処理後のCryo OCPから分化誘導した破骨細胞の骨吸収能を検討した。骨吸収能はBD BioCoat^<TM> Osteologic^<TM> Bone cell culture systemを用いて評価した。H_2S無処理での吸収窩数は65.9±5.2個/2mm^2(Mean±SD)であった。一方、0.1ng/ml H_2S処理では47.7±2.5cells/2mm^2を示し、無処理群の68%と低値を示した(P<0.001)。無処理では吸収窩数も多く、さらに吸収窩1個あたりの大きさも大きいものが多数観察された。しかし0.1ng/ml H_2S処理では吸収窩数、さらに一つあたりの大きさも無処理群に比べ小さいものが観察された。以上の結果より、硫化水素は破骨前駆細胞に直接的に作用し、破骨細胞の分化、機能に障害を与える可能性が示唆された。
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