Research Abstract |
本研究はベンチマーキング作成に必要な急性期病院における転倒予測アセスメントツールを検討することを目的とした.本年度は次年度であり,1.急性期病棟(2つの一般病棟)から回復期病棟,療養型病棟を持つ1病院(200床)において6ヶ月間の転倒について筆者らの開発したアセスメントツールの得点と転倒後に広範囲な原因探索として根本原因分析を行い,病棟でのツール得点と要因を検討した.2.米国での安全対策の事情として,米国ワシントン市のProvidence Hospitalで行われた医療安全の研修会に参加し,米国での急性期病院における転倒予防の取り組みを把握した. 1.については,106件の転倒をもとに筆者らが開発したアセスメントツールの合計得点と転倒後に根本原因分析表を用いて,転倒者および件数毎に分析した.なお,根本原因には(環境・個人要因,排泄内容,スタッフ数,患者の認識,他)などを詳細に調査した.その結果,(1)ツールの平均点は6.1±2.6点であり,病棟別では5.9-6.2点の範囲で病棟によるツール得点の差はみられなかった.(2)根本原因分析の結果では,勤務交代の時間帯でのスタッフの数,ポータブルトイレやベッド柵の位置,マットコールの位置,履物,杖のキャップなどの個人要因,環境的要因,スタッフ人数などが絡み合っていた. 2.については,米国の看護の質を管理するためNational Database of Nursing Quality Indicaters(NDNQI)から転倒転落に対する指標が示されていた.それによると,すべての病院は延べ患者1000日あたり3-4の転倒件数,200床以上の病院の外科病棟は1-2.5件である.Providence Hospitalでもその指標にあわせて月ごとにマークで評価しており,6ヶ月概ね良好の結果であった.使用している(推奨?)アセスメントツールはHendrich II Fall Risk Modelであり,(1)リスク要因として,混乱(4点),うつ(2),排泄(1),めまい(1),男性(1),抗てんかん薬(2),精神安定剤(1),(2)実地テスト(Get-up-and-go)は1人でできるから全介助まで5段階に分かれていた(点数0-4点).(1)(2)のトータル5点以上がハイリスクである.また重要な点として,転倒しても傷害をつくらないことをあげていた.以上を通して,指標の重要性が再確認できた.
|