Research Abstract |
本研究は,未熟児(超・極低出生体重児)を出産した母親とその児の母子関係形成のための支援策を明らかにすることを目的とする。また,1)母親の妊娠中の状況(妊娠経過中の異常,胎児に対する受容),2)分娩時の状況と分娩が母親に及ぼした影響,3)未熟児を出産したことによる母親のストレス(身体・精神・社会的症状),4)パートナーを中心とした家族関係とパートナー(児の父親)の行動や態度及び児の同胞との関係,5)児の発育・発達の経過が母子関係に及ぼす影響とその変化について明らかにする。 I.研究方法 調査対象は,岡山大学医学部・歯学部附属病院で出生した1,500g未満の低出生体重児とその母親である。調査内容は,妊娠中の状況,分娩時の状況と分娩が母親に及ぼした影響,分娩に対する印象・感想,出産後の母親のストレス症状(身体・精神・社会的症状)、パートナー(児の父親)を中心とした家族関係,パートナーの行動や態度,児の同胞との関係,児の発育・発達状態,母子関係(対児感情,対児行動)の変化,育児行動と育児へ印象と変化等である。調査方法は,半構成的面接法による聞き取り調査と直接観察法を用いる。調査時期は,(1)出産後から母親退院までの期間(母子入院期間),(2)児のみ入院中期間中,(3)児の退院後3〜5年間とする。 II.結果 今まで継続調査している症例に加え,平成17年度以降新たな症例を追加して継続調査を実施している。今年度は新たに12症例が追加となった。1.出産時,母親は過度のストレス状態であり,退院後2か月以上もストレス症状が続く者がいる。2.初回面会時の母親の児に対する印象では,児に対して接近感情をもつ者は少なく,罪悪感をもつ者が多い。3.保育器から出ることや授乳を行うことは,母子関係確立や愛着形成の上で重要な機会となる。4.パートナーが非協力的な場合,母親は児に対して回避感情を抱きやすく,育児にも否定的な感情をもちやすい。5.児が退院後も,母親は児の発育・発達に関して多くの不安・心配をもつ者が多く,それらは長期間母親の心理的な負担となっている。6.児の後遺症や障害がわかった場合に母親の動揺や不安は大きく,特に専門的な知識を求める傾向にある。
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