Research Abstract |
前年度から「育児ノート」の利用を試験的に開始しているが,今年度は対象を増やし,前年度に引き続き継続して利用を試みた。 現在ダウン症児の母親の一部が利用している「ダウン症の健康手帳」は用紙の補充が出来ないため,本研究における「先天異常をもつ子どもの母親のための『育児ノート』」作成にあたっては,第一にその点を工夫した。このノートの大きな特徴は,(1)ファイル形式で用紙の補充が可能であり,(2)ノートの構成も母子に必要な内容に変更できること,(2)記録用紙の他にクリアポケットを綴じ付け,その中に母子手帳や診断書など重要な資料を保管できることである。 ノートの主な構成は,緊急連絡用ページ(当該病院の連絡先,外来診療時間,研究者の氏名・所属・連絡先など),児の成長発達の経過(身長・体重などの値),母親用ページ(前回受診後から当日までの児の様子,医療者への質問,療育の様子,イベントなど何でも記載可),医療者用ページ(当日受診時の母親と医師のやりとりおよび児の様子などについて,看護師が記載),クリアポケット(他科受診の返信や重要な検査結果のコピーなどを保管),障害・疾患や検査などの説明のページである。今後,母子のニーズに合わせて,社会資源や教育機関に関する情報のページを追加する予定である。 ノートは初診時に研究の主旨を説明して母親に配布し,次回受診日までの児の様子や医療者への質問などについて,可能なら記載して頂きたいと協力を依頼した。今年度の遺伝外来における毎月の定期受診者は1名,3-4ヶ月間隔での受診者は1名,半年以上期間をおいて受診する者は6名で,計8名に「育児ノート」を配布した。そのうち2名の母親が,受診後の児の様子を記載している。ノート利用の効果は,研究者においては家庭での母子の様子が把握できるため,当日の母親の発言内容に対し,これまで以上に共感できるようになったこと,児の様子についても観察ポイントが明確になるなど,大きな成果が得られている。ノート利用に対する母親の感想は,今後確認する予定である。 前年度に,基礎的調査として先天異常児をもつ母親・家族の不安や育児負担の状況を把握し、育児支援の方法を探る目的で、後方視的調査を実施した。その調査結果を,International Society of Nurses in Genetics, the 19^<th> Conference October 7-10, 2006 New Orleans, Louisianaにおいて,"Analysis of content of consultation by mothers who have a child with congenital anomaly at genetic clinic in Japan"の演題で発表した。
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