Research Abstract |
出生前診断により胎児異常の告知を受けた母親の告知から産後36ヶ月までの不安および抑うつを理解する目的で,胎児異常の告知を受け,児を出産した母親10名を対象に,STAIおよびSDSを用いて縦断的に調査した。対照群として,健常児をもつ母親50名についても産後6ヶ月から産後36ヶ月まで同内容を縦断的に調査した。 告知を受けた母親の不安や抑うつは,告知時が最も強く,産後12ヶ月から18ヶ月が最も弱かった。健常児をもつ母親と産後を比較すると,告知を受けた母親の方がすべての時期において,不安や抑うつは弱かったが,変動は大きかった。上の子どもの有無別で比較すると,告知を受けた母親は,上に子どもがいない人の方がすべての時期において,不安や抑うつが強かった。それとは対照的に,健常児をもつ母親は,上に子どもがいる人の方がすべての時期において,不安や抑うつは強かった。告知を受けた母親の産後の不安や抑うつは,健常児をもつ母親とは差異が認められ,上の子どもの有無が影響していることが明らかになった。 また、健常児を対象にした産後3年間の母親の性役割と精神状態との関連は、家事,育児とも父親が従事する割合は低く,家事および育児役割に対する母親の理想では,STAI,SDSともに「両親同等」と回答した者が最も高かった。家事役割に対する母親の理想と現実との差および父親の認識との差では,12ヶ月までは母親の家事比重が大きいほどSTAI,SDS得点が高く,とくに6ヶ月までに有意差が認められた。育児役割では,24ヶ月までは母親の育児比重が大きいほどSTAI,SDS得点が高く,とくに12ヶ月までに有意差が認められた。
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