Research Abstract |
本研究の目的は,認知症高齢者の介護者用コミュニケーション技法に関する教育プログラムを開発することである。今年度はコミュニケーション行動に影響する要因を分析し,必要な介入について検討することである。研究対象は,在宅の介護者57人と10組の介護者・認知症高齢者のペアである。 認知症あり群の介護者のコミュニケーションスキル使用認識は,なし群の介護者よりも,有意に高い結果であった。しかし,使用認識と,コミュニケーションの客観的行動観察との相関は,受容的会話の配慮(r=.05),発話の配慮(r=.51),根気強さ(r=.27)であった。そこで,3因子の行動観察得点に関連する要因の探索を行った結果,受容的発話の配慮には慢性疲労(r=.62,p<0.57)が,発話の配慮は気力の減退(r=-.56,p<0.93),根気強さにおいては関連の見られる要因はなかった。しかし,受容的発話の配慮と根気強さは高い相関(r=-.71,p<0.05)があることから,根気強さにおいても慢性疲労が関連することが示唆された。 認知症高齢者の介護を行うことでコミュニケーション技法に関する使用認識は高くなるものの,実際のコミュニケーション行動は,介護期間が長いほど根気強さが有意(r=-.76,p<0.05)に低下し,受容的会話の配慮も低下する傾向(r=-.62,P<0.06)であった。 以上から,認知症高齢者の介護者に対する教育方法として,日々のコミュニケーション技法に対する使用認識を介護者自身が把握できる機会を設けるとともに,疲労感の測定,介護期間等の情報収集を行い,その結果介護期間の長い介護者で気力が減退している,慢性疲労が蓄積している介護者に対して,実際のコミュニケーション行動が自身の認識とは差がある可能性を伝えていくなど,介護者自身が自らのコミュニケーション行動を客観的に振り返る機会を提供することが必要であろう。
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