Research Abstract |
全国の精神病院入院中の患者で糖尿病を合併している患者の実態を知り,問題点を明らかにすることを目的とし,全国の精神科病院20施設に入院する患者4,188名中,糖尿病患者272名のデータを分析した。糖尿病合併患者の割合について疾患分類毎の比較では,「症状性を含む器質性精神障害9.8%」「精神作用物質使用による精神および行動の障害9.4%」「気分(感情)障害7.3%」「統合失調症,統合失調型障害および妄想性障害6.8%」の順であった。性別による比較では,男性患者2,374名中糖尿病合併患者は163名(6.9%),女性1,814名中99名(5.5%)であり,男性の方が糖尿病合併患者の割合が高かった。糖尿病管理状況について,HbA1c6.5%未満を「糖尿病管理良好群」,6.5%以上を「糖尿病管理不良群」とし,自己管理がうまくいかない要因[自制困難][糖尿病の病識欠如][糖尿病の誤った認識][精神症状の悪化]の4要因について比較した。[自制困難]の要因を有する割合は「良好群」では152名中43名(28.3%),「不良群」では104名中71名(68.3%)が有していた。[糖尿病の病識欠如]の要因を有する割合は「良好群」では44名(28.9%),「不良群」では66名(63.5%)であり,「不良群」の中に[自制困難][糖尿病の病識欠如]の要因を有する割合が高いことが明らかとなった。このことより[自制困難][糖尿病の病識欠如]に対して介入していくことが重要である。[自制困難]を有する患者の自己管理に向けた看護介入として,自尊感情を高め,自己コントロール感をつける関わりが重要であると考える。また,[糖尿病の病識欠如]の要因を有する患者の自己管理に向けた看護介入としては,それぞれの精神疾患の特性に合わせた説明により,糖尿病の認識を高めていく関わりが重要と考察する。その他,治療の実態として運動療法は9.1%しか実施されておらず,年代や精神症状に合わせた運動療法を積極的に取り入れていく必要が示唆された。さらに,食事療法について87.9%が実施しており,社会復帰に向けていかに食事療法を継続させていくかが重要な支援であった。 一方,糖尿病自己管理に向けた精神疾患患者への看護師の関わりのプロセス及びコツを明らかにすることを目的とした質的研究では,糖尿病自己管理に向けた効果的な関わりに必要なカテゴリーとして「精神疾患患者の特性の理解」「意識の転換」「具体的な関わり」「長くつき合えるための関わり」が抽出できた。中でも患者・看護者共に「意識の転換」が重要であった。今後は,患者・看護者共に意識の転換を図り,患者の特性に合わせた手立てを考えていくために,患者参画型の糖尿病教室を企画し,介入研究として発展させていきたい。
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