2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17600006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石光 泰夫 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60093366)
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Keywords | ロマンティック・バレエ / 『ジゼル』 / ブルノンヴィル / 北方ロマン主義 / 舞踊史 / 表象文化論 |
Research Abstract |
平成19年度は、『ジゼル』の初演時の振付を調べるのに、この作品の発想の根底にある、キリスト教徒とヨーロッパ各地の異教の神々との相克という問題(ハイネのインスパイアによる)の理解を深めるべく、北方ロマン主義のいわば根城であるデンマークにおいて、文献調査、また初演時の形を多くとどめて今なお多くのロマンティック・バレエをレパートリーとしているデンマーク・ロイヤルバレエの上演形態などを実地にあたることによって、著しい成果をあげることができた。デンマークはもともと、パリのロマンティック・バレエの大半を北欧の、北方ロマン主義の牙城ともいうべき場所に移植したオーギュスト・ブルノンヴィルを生んだ国であり、しかも北方ロマン主義をしっかりと視野に収めておかないと到底理解できない『ジゼル』の深層構造を、これまでにない形で立体的、かつ具体的に把握するのに最適の場所であった。ここでの、北方ロマン主義との関連で得られた多くの知見は、『ジゼル』の復曲を、少なくとも研究成果報告書において具体的に試みるのに、決定的な役割を果たすはずである。 また、VHSのビデオテープでしかのこされていない貴重なバレエ上演の資産を、現在考えられる最良の状態で後世に残すべく、ブルーレイディスクのプレーヤーを導入し、移植の作業を開始したのも、平成19年度の大きな成果であった。 研究成果は表現する身体と関連して、『声の力』という単著を敢行する予定であったが、本年度は間に合わなかった。この書物に全精力を傾注したので、雑誌論文等の発表は、本年度は不可能であった。
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