2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17600021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
北野 雅弘 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (80195271)
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Keywords | ギリシア / 悲劇 / パフォーマンス / 西洋古典 / 演劇学 |
Research Abstract |
本年度は、ポストドラマ演劇の状況の下でのギリシア悲劇の上演についての資料を収集し、調査を行った。問題は、ドラマの終焉という時代認識の下で、演劇上演がギリシア悲劇に何を求めたかである。 シェクナーのPerformance Groupは1968年に、観客を巻き込むグロトフスキー流祭祀演劇としてエウリピデスの『バッコスの信女たち』を上演した。また、その少し前に、ジュディス・マリーナとジュリアン・ベックのThe Living Theatreは、ソフォクレスの『アンティゴネ』をヘルダーリンがドイツ語訳したもののブレヒトによる改版を用い、それを英語化し、テキストにさらに改変を加えることで、独自の、ポリフォニー的な演劇を作り上げることに成功した。彼らはこの上演を実に20年近くにわたって続けていたが、67年のアメリカでのこの作品の上演は、『アンティゴネ』のアメリカでの上演としては20世紀のもっとも早いものの一つである。 70年代に入ると、彼らほど前衛演劇の意識を前面に出さないペーター・シュタインの現代的な上演と、テキストの大胆な改変と再構成という点ではシェクナーを上回る鈴木忠志の一連のギリシア悲劇上演が、ドラマの週末状況をギリシア悲劇の持つ一種の原ドラマ性、あるいは祭祀性によって打開しようとする試みとして重要であることが確認された。祭祀性とポリフォニー性という二つの上演傾向は、1989年の太陽劇団による『タウリケのイフィゲネイア』と『オレステイア』の上演によって結合され、前衛的な劇団によるギリシア悲劇の可能性の追求の頂点を迎えることになるが、その過程の検討が次年度の課題である。
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