2006 Fiscal Year Annual Research Report
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17600021
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
北野 雅弘 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (80195271)
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Keywords | ギリシア / 悲劇 / パフォーマンス / 西洋古典 / 演劇学 |
Research Abstract |
本年度は、前年に引き続き、ポストドラマ演劇状況の中でのギリシア悲劇上演という状況認識に基づく欧米の代表的な上演についての資料調査を行い、シェクナーとパフォーマンス・グループについての研究を論文化すると共に、リヴィング・シアターの『アンティゴネ』上演について学会発表をおこなった。シェクナーにおいてギリシア悲劇がその祭祀性において現代演劇にとって重要性を持っていたのに対し、シェクナーと同じ68年に初演されたリヴィング・シアターの『アンティゴネ』上演では、同時代的視点ではむしろそのアナルコ・サンディカリズム的傾向だけが重視されていたが、演劇のポリフォニー的展開が見いだされた。これは、すでに『アンティゴネ』に、イデオローグとしての登場人物による解決なき葛藤として萌芽的に見いだされ、エウリピデスの後期作品において全面的に展開することになる可能性であった。リヴィング・シアターが用いたブレヒトのテキスト自体はこのギリシア悲劇のポリフォニー的傾向をむしろ抑圧するものだったが、彼らが、ブレヒトがリハーサル用に用いた別テキストの混入、登場人物と俳優の意図的な分離と結合を通じて、ソフォクレスのサブテクストを前景化することに成功したことを、発表で示した。 本年度のもう一つの課題は、これも昨年から引き続いてのものであるが、古代劇場遺跡を利用したギリシア悲劇上演の可能性の研究である。昨年度、ギリシアの古代劇場遺跡における上演を調査したが、本年度は、イタリアのシラクサにおける、より、娯楽化・大衆化した上演形式を調査した。古代劇場は、それだけでなく、例えばストロープとユイエに見られるように、演劇の異化効果を高めるための重要な手段であることも検討課題として浮かび上がってきた。
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Research Products
(1 results)