2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本人急性冠症候群における冠動脈形成術前スタチン投与の有効性に関する臨床疫学研究
Project/Area Number |
17606004
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
戸高 浩司 Kyushu University, 大学病院, 講師 (40398061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江頭 健輔 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (60260379)
砂川 賢二 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (50163043)
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Keywords | スタチン / 多面的作用 / トランスレーショナルリサーチ / 冠動脈インターベンション / 二重盲検 / エビデンス |
Research Abstract |
二重盲検用の実薬・プラセボ提供を数社と交渉したが困難を極めた。漸く一社が同意し、九州臨床研究支援センターに症例割付・登録を依頼した。対象を急性冠症候群に限らず冠動脈形成術(PCI)施行予定の患者とし、評価項目を心事故から心筋逸脱酵素の上昇に変更した。 急性冠症候群3例を含む12例をエントリーした。LDLコレステロールは124±21mg/dlから1週間の試験薬(ロスバスタチン5mg又はプラセボ)投与で101±26へ低下し2週後には更に93±25に低下した。ほぼ全例で2週後には低下しており入院食事療法の影響も加味されている。経時的採血でCK-MBはPCI前:6.8±2.6u/l、PCI 12-24時間後:11.8±7.8となり、EPの正常上限2倍を超える症例はなかった。トロポニンTはPCI前:0.001±0.003ng/ml、PCI後:0.117±0.176であり、4例がEPの正常上限を越えた。CRPは試験薬投与前:0.14±0.11mg/dlから1週後PCI前:0.27±0.25と変化なくPCI後:1.38±1.21へと上昇した。血小板活性化指標のPAI-1については投与前:31.6±26.2ng/mlから1週後PCI前:16.5±11.0へと幾分低下し、PCI後:36.2±18.1へ再上昇した。何れの指標もLDL低下度とは明らかな関連は見られなかった。周術期に1例がno reflowを示し心筋逸脱酵素上昇を示した。半年後確認カテを終了した9例中2例に再狭窄を認めた。ここ1-2年、高脂血症のない虚血性心疾患でも広くスタチンが処方されており大半が除外される。未だ目標症例数に達せず開鍵していない。 プラセボ確保に予想外の時間が費やされる間に臨床慣行が変化し計画通りの試験実施が困難となった。本邦でも治験以外の臨床試験が二重盲検で施行できる環境整備を行わない限り、今後もエビデンスレベルの高い結果を得ることは非常に困難と考えられる。
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