Research Abstract |
本研究は,離散構造データの幾何的配置変動が引き起こす複雑かつ大域的な位相構造変化について,理論的ならびに実験的に追究し,諸問題に共通するメカニズムを明らかにすることを目的としている.初年度は,階層的クラスタリングを主たる対象として,基礎的な数値実験ならびに安定性評価に関する検討を中心に行った. 階層的クラスタリングの位相構造変化を見る新しい考え方として,「仮想要素追加法」を考案した.これは,調べたいデータのクラスタリング結果に対して,仮想的な要素1個を追加してクラスタリングをやり直したときに,もとのクラスタ構造と本質的に同じ構造が得られるかどうかを調べるものである.このとき,追加する要素の位置によって構造が変化する場合とそうでない場合とがある.その性質を調べるために,任意の要素配置に対して,構造変化を引き起こす追加点の境界線を描画するようなツールを作成した.次に,構造変化が起きない領域が多いほど,もとのクラスタリング結果は安定であるという考え方に基づいて,クラスタの木構造の各ノードの安定性を算出する手法を考案した.特に,2次元ユークリッド空間でクラスタ間距離として重心法を用いた場合について解析し,発表した. これと並行して,CG,可視化,形状処理の各分野において,種々の問題に取り組み,関連する問題の洗い出し作業を続けている.その過程において,以前に提案した,1次元スカラーデータを対象とした「二色塗り分け疑似カラー表示法」について,新たな表示形態を含めて国際会議で発表した.また,大規模な木構造データの可視化を行う際の,わかりやすいノード配置方法とリンクの提示方法について検討し,発表した.
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