2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17650057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 陽一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (20143034)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 竜一 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (30323116)
坂本 修一 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (60332524)
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Keywords | 音楽圧縮 / 劣化知覚 / 因子分析 / MP3 / ITU-R BS.1116-1 |
Research Abstract |
本年度は、基礎的な圧縮処理による信号のひずみの特性を調べるために、異なるビットレートで圧縮した際の再生音の主観的なひずみの程度を聴取実験により評価させた。音楽信号の圧縮符号化手法としては、広く利用されているMP3(MPEG Layer3)を対象として検討を行った。現在、MP3よりも音質が良い圧縮符号化処理も開発されているが、MP3は符号化、復号化の処理がオープンであり、質の良いソースプログラムも利用可能であることから、今後、内部処理を分割して効率的に解析ができると判断し、これを採用した。まず、ITU-R BS.1116-1で勧告されている微小な音質差の評価実験手法に基づき、隠れ基準つき3刺激2重盲検法により、圧縮処理前と処理後の音の主観的劣化度を判断させ、個人差についてクラスタ分析により解析した。その結果、音質の劣化に比較的敏感な人とそうではない人がいることが判明した。この原因が、聴取者が聴取音に対して受ける印象の違いに起因していると考え、複数の形容詞対を用いたSD法により聴取者が感じている印象の空間の抽出を試みた。刺激音には、先の実験と同様に圧縮処理による音質劣化音を用いた。得られたデータを基に、探索的因子分析を行ったところ、4〜5因子でおおよそ聴取者の音質劣化知覚空間を表現できることが判明した。第1〜3因子については、因子負荷量の大きな形容詞対から考え、それぞれ「美的・叙情的因子」「明るさ因子」「やわらかさ因子」の3つの因子が対応すると考えられた。この妥当性について更に検討するため、各形容詞対から因子へは単一パスのみを仮定した確認的因子分析を実施したところ、この構築したモデルにより圧縮処理による音質劣化の構造を良く表現できていることが判明した。特に、64kbpsのように圧縮率を高くした場合には、音質劣化に敏感な人は「美的・叙情的因子」が大きく悪化することが分かった。
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