2006 Fiscal Year Annual Research Report
バーチャルリアリティによる擬似経験が空間学習に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
17650075
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
浅村 亮彦 北海学園大学, 経営学部, 教授 (70301968)
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Keywords | バーチャルリアリティ / 空間認知 / 空間学習 / 空間能力 / 認知地図 / コンピュータグラフィックス / 現実感 / 空間定位 |
Research Abstract |
本研究は,バーチャルリアリティ(以下,VR)による空間学習特性を心理学的に解明することを主たる目的としている。今年度はVRの表現法が空間学習に与える影響を検証するために,三次元コンピュータグラフィックス(以下三次元CG)による線画から学習する場合と,陰影および色を表現した画像から学習する場合とで,その正確さ,効率性などを比較する実験を行った. 学習対象は三次元CGによって作成された2種類の空間であり,いずれも最低限記憶すべき目印が3箇所,方向を変える交差点が6箇所含まれていた.学習材料は,いずれの場合も出発地点から終着地点までを移動する映像であり,線画によるものと陰影・色付きの2種類が作成された.被験者は2つの街並みを一方は線画,他方は陰影・色付き画像で学習した.学習には現実感を高めるため,背面投影式スクリーンおよびプロジェクターを用いた.学習手続きは,それぞれの学習対象について学習材料を4回観察することであり,2回目以降の学習では,映像の再生を3地点で一時停止し,それぞれの地点を基点として出発地点と終着地点の方向推定,およびその地点が経路全体の中でどの付近かを推定する,現在位置推定を遂行させた. 線画による学習と陰影・色付き画像による学習について,出発地点および終着地点の方向推定誤差,そして現在位置推定誤差を指標として比較を行なった.その結果,全体的に陰影・色付き画像による学習がやや効率的かつ,正確であることが示された.特に,線画の場合は終着地点の方向把握で誤差が増加する傾向が認められた.これらの結果は,三次元CGの色と陰影を除外することによって抽象度が高まり,物体認識および全体的空間の把握に障害が発生し得る可能性を示している.すなわち,VRによる実用的な空間学習を実現するには,色および陰影情報を表現することが重要であると考えられる.
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