2007 Fiscal Year Annual Research Report
グリオーマ腫瘍幹細胞の脳内環境における分化・増殖能と浸潤パターン
Project/Area Number |
17650102
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩城 徹 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 教授 (40221098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 諭 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90294917)
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Keywords | グリオーマ / 腫瘍幹細胞 / 浸潤 / 増殖 / 化学療法 |
Research Abstract |
本研究ではこれまでにラットグリオーマ細胞株C6より腫瘍幹細胞の性質をもつ分画(C6-TSC)を分離し、C6-TSCがin vivoにおいて浸潤性増殖を示すことを見い出した。また、ACNU耐性C6細胞がC6-TSCと同様の生物学的動態を示すことを発見した。 今年度は、in vitroで単離された腫瘍幹細胞と生体腫瘍組織内の腫瘍細胞との関係を検討するために、C6に加えてU87、U251、U373グリオーマ細胞株を幹細胞培養条件下(Neurobasal medium+B27+L-Glu+EGF+bFGF)で培養し、sphere形成能、多分化能を観察した。全ての細胞株で、幹細胞培養条件下において、大多数の細胞が1次および2次sphereを形成した。グリア、ニューロンへの多分化能は親株でも認められたが、sphere形成細胞(SFC)ではより多くの細胞がニューロンやオウゴデンドロサイトのマーカーを発現した。SFCを分散して血清存在下で培養すると、再びmonolayerとして増殖した。これまでC6グリオーマ細胞株の中にside populationとして少数の腫瘍幹細胞が含まれる、あるいは、C6グリオーマ細胞はほとんど全てが腫瘍幹細胞であるとの相反する内容の報告があったが、今回の結果からはグリオーマ細胞は一般に株化された時点で腫瘍幹細胞としてのポテンシャルをもつ分画が選択されていることが示唆された。また、幹細胞としての形質(stemness)は特定の細胞分画の特性であるだけではなく、環境要因による可逆的な表現型であることが示唆された。このことはさらに、生体腫瘍組織内でも局所の酸素濃度や栄養状態などの環境因子や治療の介入によって腫瘍細胞のstemnessが可逆的に消長する可能性を示している。
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