2005 Fiscal Year Annual Research Report
生理的溶液を用いた生殖細胞の高圧ガラス化凍結:究極の凍結保存法を目指して
Project/Area Number |
17650121
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
越本 知大 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 助教授 (70295210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 孫三郎 高知大学, 農学部, 教授 (60152617)
枝重 圭祐 高知大学, 農学部, 助教授 (30175228)
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Keywords | 凍結保存 / 生殖細胞 / ガラス化凍結 / 高圧凍結 / 透過型電子顕微鏡 / 脱ガラス化 |
Research Abstract |
従来のガラス化凍結法に代わる、高圧法を用いた細胞種を限定しない万能凍結保存法の開発を目的とした基礎検討を、マウス受精卵をモデルとして実施した。高圧凍結装置は電顕試料作成を目的に開発された機材であり、保存を目的とした受精卵凍結へのそれらの適用性を第一に検討した。その結果、実体顕微鏡下で卵を特殊超薄キャリアにロードし、溶液の漏出がないようにシールする一連の手技に熟練することで、従来のシステムを流用できることが判明した。この結果をもとに当初想定していた器材の大幅な改良を行わず、手技的な熟練のみをもって実験を進めることとした。また手技の熟練には受精卵と同等の粒径100μmのガラスビーズをダミーとして反復練習する方法を考案した。次いで凍結に弱い一細胞期卵を、耐凍剤を添加しない生理的な培養液に懸濁して高圧凍結し、氷晶の形成と細胞障害について透過型電子顕微鏡像による形態観察からその影響について検討した。その結果、凍結した殆どの卵で致死的であると思われる細胞断裂が確認され、耐凍剤を用いない高圧凍結は細胞傷害性が高いことが判明した。これは植物細胞の高圧凍結に観察される現象で、原因は解明されていない。しかし一部の卵では断裂が認められず、凍結条件が揃えば物理的損傷なしに受精卵が凍結できる事がわかり、高圧凍結による細胞凍結保存の可能性が示唆された。ただ、このままの条件では細胞の形態的正常性は低率かつ偶発的にしか得られないため、卵の発生段階ごとの凍結特性や溶液条件を従来のガラス化凍結法の場合と比較することで至適条件の解明に向けた検討に入った。同時に融解条件の検討を開始した。融解過程は圧力条件1bar(常圧下)で行わねばならず、脱ガラス化による卵への傷害の可能性が懸念される。そのため形態的正常性を確認した凍結卵の融解後の生理的・形態的な観察を、通常法でガラス化凍結した卵と比較した検討を行っている。
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