2005 Fiscal Year Annual Research Report
見えない空間における五感変化および空間把握支援に関する研究
Project/Area Number |
17650173
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
落合 太郎 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (00330788)
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Keywords | 視覚障害 / ユニバーサルデザイン / 五感 / 暗闇 / 聴覚 / 触覚 / 味覚 / 嗅覚 |
Research Abstract |
暗闇においては視覚障がい者も晴眼者も視覚以外の感覚器で空間の把握を行う必要があるという点では、同じ条件下にある。たとえば夜間の火災や地震等の災害時における避難行動がこうした状況に相当する。本研究が据える社会的意義としては、建築基準法の内装制限等の諸規定に対し、より決めの細かい視点を投げかけることであり、晴眼者にとっても視覚障がい者にとっても、災害時の暗闇における避難経路における行動がより安全となる方法を再検討するための基礎データとすることである。ひとつのターゲット仮説として、壁や天井と比べて火災時における内装制限がゆるい床材の効用を見直す契機にしたいというのが、本研究の主要な狙いである。床材の材質とレイアウトをどのようにデザインすれば聴覚、触覚などの3次元把握感覚器官が効果的に作用するかを分析した。 人はくらやみの中では味覚、聴覚、嗅覚、触覚がより敏感に機能すると考えられる。視覚障がい者は晴眼者よりも視覚以外の分野で「感覚が優れている部分がある」と考えられ、見えない状態で視覚以外の感覚変化が、晴眼者と比べてどう異なるか、五感それぞれが暗闇でこのような効用を発揮し、どの感覚器官が最も頼りになるか、実験を行った。このため視覚障がい者のNPO団体と公立の心身障害者福祉センターとの実験協力体制の構築を行ない、「光覚」レベルの視覚障がい者からの実験参加を得た。 実験方法としては、問診票の作成、誘導からデータの集計、視覚障がい者と晴眼者との比較まで一通りの流れを確立することができ、明らかに視覚障がい者のほうが優れた感覚があるという点を統計的に抽出することができたのは成果であった。 本研究で基本とするユニバーサルデザインの理念は、単に健常者と障害者が共に利用する機会を創るという目的だけではなく、むしろ障がい者のほうが健常者よりも優れた能力面があるという点に注目し、これを商品開発の基本に据えるという考えである。本研究では、視覚障害者が経験的に音や風等から空間を把握している手法をヒントに、一般人にもわかりやすい暗闇誘導の具体的な方法を探る。 来年度は同様の実験体制と手法で、空間把握の仮説検証に重点を置いた実験を追加し、全体の研究成果を取りまとめる計画である。
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