2006 Fiscal Year Annual Research Report
幼児期の言語発達に及ぼす模倣運動の影響とその脳内メカニズム
Project/Area Number |
17650176
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大森 肇 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (20223969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 聖修 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (10147126)
後藤 邦夫 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 教授 (30215488)
加我 牧子 国立精神・神経センター, 精神保健研究部・知的障害部, 部長 (20142250)
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Keywords | 言語発達 / 模倣運動 / 光トポグラフィ / 脳活性部位 / 幼児期 |
Research Abstract |
ブローカ野は発語を担う言語野であるが,近年,模倣運動など言語表出以外の行動によっても活性化することが明らかにされ始めた.脳には感受性期が存在しその時期の外部刺激が脳の機能発達に大きく影響することから,本研究では「言語発達の感受性期における模倣運動刺激が言語表出の発達を促進させる可能性」について検討した.おもな検討課題は二つである.まず光トポグラフィを用いて,「成人における急性模倣運動がブローカ野の活性化に及ぼす影響」を検討した.健康な成人男性のべ13名に会話タスク(Sakatani et al.(1998)の方法に基づく約5分間の質疑応答)と模倣タスク(上肢のみによる12種類または27種類の模倣動作)を行わせ,大脳皮質の血液動態を検討した結果,9名で会話タスクと模倣タスクにおいて共通する領域に反応が認められた.その領域が10-10電極配置法におけるFC5(ブローカ野にあたる位置)を含んだ領域であることから,会話時だけでなく模倣迎動時にもブローカ野が活性化したものと推察された.一方,これらの反応には個人差があることも示された.次に,「幼児に対する慢性的な模倣運動介入が言語検査の成績に及ぼす影響」を検討した.3歳児を模倣迎動群と対照群に分け,模倣運動群には週に3回3か月間の模倣運動介入を行った.模倣動作として急性模倣運動実験で用いたものを中心に40動作前後を行わせ,介入時間は約20分間とした.両群に対して,発音検査(TK式言語発達診断検査の下位検査)と模倣検査を介入前,1か月後,2か月後,介入後に行った結果,慢性的模倣運動の介入が言語表出の発達を促進する可能性が示された.模倣検査得点と言語検査得点との間,また模倣検査得点の変化と言語検査得点の変化との間には相関関係は見られなかった.この結果から,模倣運動スキルのレベルや上達の有無に関わらず,模倣運動すること自体が言語発達を促進する可能性が示唆された.
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