Research Abstract |
地球規模で深刻化する環境汚染や化石燃料の枯渇問題に備えるため,衣料・インテリアに使用される汎用繊維・プラスチックにおいても環境への負荷が少ない素材の普及が望まれている. 本研究では,トウモロコシ等のデンプンから合成されるポリ乳酸が,生分解性繊維としても注目されていながら,現状では染色性に乏しく,分散染料染色が常法であるため,敏感肌の着用者にとっては染料溶出による接触皮膚炎の心配等,繊維特性を十分に発揮できないことに着目した.すなわち,ポリ乳酸表面に安全な化学修飾を施し天然色素で容易に染色可能とする方法の検討と,その染色性評価を研究目的とし,H17年度は以下のように進めた. 1)ポリ乳酸への化学修飾条件を検討:ポリ乳酸へのガンマ線照射による二重結合の導入を経て多官能基を導入し,酸性末端および塩基性末端をもつ2種類の科学修飾を施した. 2)染色に適した色素をもつ植物の選定,色素の抽出・精製:天然色素として植物(ウコン,カテキュー,タマネギ,ミカン,クチナシ,ブドウ,シソ,シコン,ベニバナ,パセリ,紅茶,緑茶)から色素を抽出し染色液を調整した. 3)色素の染着に適した官能基の検討:未修飾でも微量の染着が可能な色素は,ウコン,カテキュー,タマネギだったが,酸性多官能基で化学修飾したポリ乳酸では,ウコンの場合は未修飾の6倍,カテキューおよびタマネギでは4倍の染着量を得た. 4)染色堅牢度:上記の染色布について汗,酸滴下,アルカリ滴下,紫外線,洗濯堅牢度試験によって評価し,紫外線に対して脆弱なウコン以外について全ての項目について3級以上の評価値を得た.
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