2005 Fiscal Year Annual Research Report
ロバート・ボイルの科学思想の起源・背景と研究スタイル
Project/Area Number |
17650272
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉本 秀之 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (90202407)
|
Keywords | ロバート・ボイル / 科学思想 |
Research Abstract |
ロバート・ボイルの研究スタイルの特徴についてそのもっとも基礎的な要因を明らかにした。 ひとつは、ボイルが貴族であって、十分な資産を活用できたことである。もうひとつは、ボイルが弱視であって、著作家とのしてキャリアの出発時から、写字生を利用していた点である。ボイルは、写字生を使って著作にほとんどすべてを口述筆記したのみならず、実験日誌を記す際にも、読書ノートを取る際にも写字生を使った。また実験の遂行に当たっては、有用なロバート・フックやドニ・パパン等、当時として第1級の科学者・実験家を実験助手として雇い、実験をさせ、実験ノートを付けさせている。 従ってボイルの著作のいくつかは、今の基準で言えばフックやパパンとの共同研究であって、ボイル一人の業績と見ることはできない。 また身近にサミュエル・ハートリッブやヘンリー・オルデンバーグ等、海外との情報交換の有能な窓口をもち、当時にあっても相当に珍しいキミアのドイツ語の書籍を入手し、翻訳してもらったり、内容を教えてもらったりしている。 そうした書物をボイルは、ボイルの著作としてもっとも有名な『懐疑的化学者』(1661)で秘密のソースとして利用している。 そして、ボイルは一般的に中世やルネサンスの原典に直接あたることなく、当時数多く出版された百科事典的書物、コモンプレイス書、詞華集、ドクソグラフィカルな書物を利用することが多かったことを明らかにした。
|
Research Products
(2 results)