2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17651019
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
金子 慶之 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院・COE客員助教授 (50397080)
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Keywords | 酸緩衝効果 / 断層破砕帯 / 酸性沈着 |
Research Abstract |
本研究は、森林土壌および表層水環境に酸性沈着がおよぼす影響評価を目的として、断層破砕帯内部の鉱物学的・化学的特性と断層破砕帯内部から流出する湧水及び河川水を、野外調査および室内での地球化学的分析をもとに、断層破砕帯の酸緩衝効果を定量的に見積もり明らかにすることにある。2005年に採取した丹沢山地に分布する丹沢深成岩体(トーナル岩)からなる西沢集水域の断層の影響を受けていないトーナル岩と母材内部に発達した断層破砕岩の岩石試料(計18試料)についてXRF(エネルギー分散型蛍光X線分析装置)を用いて主要元素(Si, Ti, Al, Fe, Mn, Mg, Ca, Na, K, P)の全岩化学分析を行った。その結果、断層破砕岩は母材であるトーナル岩に比べ、Siは平均約-30%,Feは平均約-50%,Mgは平均約-40%,Naは平均-70%低い値を示し,反対にCaは平均約350%,Alは平均約150%高い値を示す岩石であることが明らかとなった。したがって断層破砕岩はSi, Fe, Mg, Naに乏しくCaとAlに著しく富む、トーナル岩とは全く異なる化学組成を持つ岩石に変化していることが明らかとなった。さらに、昨年採取した同集水域内の断層破砕帯流出水の観測を8地点、渓流河川本流6地点、林内雨観測2地点それぞれの断層破砕帯流出水、渓流河川水及び林内雨について、フレーム原子吸光法でNa^+,K^+、ICP発光分光分析法でMg^<2+>,Ca^<2+>,Al^<3+>,SiO_2,PO_4^<3->、イオンクロマトグラフィーでCl^-,NO_2^-,NO_3^-,SO_4^<2->の溶存成分の分析を行った。各々の溶存成分を比較するため、各採水地点でほぼ一定の値を示した溶存Siを使って規格化し検討した。断層破砕帯流出水は、渓流河川水に比べMg^<2+>,Ca^<2+>,Al^<3+>,HCO_3^-がそれぞれ1.5〜2倍高い値を示すことが明らかとなった。以上のことから、CaとAlに著しく富み、物理的にも化学的にも風化の進行が速い断層破砕岩(帯)内部に降水及び表層水が直接または間接的に流入し、各種粘土鉱物との間に酸中和反応を起こしCa^<2+>などの塩基性陽イオンを渓流河川水へ供給しているものと考えられる。 尚、以上の研究成果を一部まとめ、論文として現在投稿中である。
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