2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国の草原砂漠化における生態移民の効果に関する計量経済的研究
Project/Area Number |
17651020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加賀爪 優 京都大学, 農学研究科, 教授 (20101248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼木 俊次 国際農林水産業研究センター, 国際開発領域, 主任研究員 (60289345)
衣笠 智子 神戸大学, 経済学研究科, 助教授 (70324902)
仙田 徹志 香川大学, 農学部, 助教授 (00325325)
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Keywords | 生態移民 / 内モンゴル / 砂漠化 / 牧畜 / 内蒙古自治区 |
Research Abstract |
本年度は,内蒙古自治区シリンゴル盟およびウランチャブ盟の生態移民村で調査を行った.シリンゴル盟の生態移民村では多くの牧民が移住後に移住前の草地を利用している.この移民村は干ばつ時の一時避難場所として機能し、牧民の生活の安定化には一定の役割を果たしているものの,移住前の草地の回復はほとんど確認できなかった.ウランチャブ盟中部は比較的降水量が多い地域である.ここの移民村は農耕地域や都市に近く,退耕還林として移住させられた農家や都市から移住した世帯など,移住元や移住後の生計方法は多種多様である. 調査した移民村では総じて農業所得が赤字の農家が非常に多い.経営状況が良くない原因は、第一に,重要な副産物である子牛の価格が低迷していることである.生態移民等の酪農農家の増加のため,価格が暴落したのではないかと考えられ,このことは生態移民の制度設計において副産物市場の需給変化を考慮することの重要性を示唆する.第二に移民の技術が未熟で経済効率性が低いということがある.乳牛を飼育する経験をもたない農家が多いが,技術普及システムが整備されていないため,非効率的な生産が行われ,十分な所得を得ることができないケースが多い。シリンゴル盟の移民村には比較的条件の良い飼料地があるので,十分な飼料を確保できる農家は乳牛の頭数を増やすことが可能である.この地域では副業の機会が少ないが、移住元の土地で羊を飼う農家は所得を上げている.一方、ウランチャブ盟の移民村には十分な耕地がなく,飼料作物を作る農家は少ない.しかし都市に近いため副業機会に恵まれていて,副業が家計を支えている.農地面積や副業機会が生態移民における農家所得向上の鍵を握る.本年度は,経営方式に多様性のあるウランチャブの生態移民村で120戸の農家家計のサンプル調査を行った.現在,その結果をとりまとめているところで,成果は5月の国際開発学会で報告する予定である.
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