2005 Fiscal Year Annual Research Report
長期放射線被ばくの細胞影響および耐性機構解明へ向けた基礎的研究
Project/Area Number |
17651024
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福本 学 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60156809)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 明 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60191110)
|
Keywords | 放射線耐性 / 放射線治療 / 二次癌 / 化学療法 |
Research Abstract |
癌の治療法として外科治療、化学療法と並んで放射線治療がある。放射線療法は、機能温存の面で優れているため、手術適応のない症例や補助療法として重要であり、その適応は拡大している。放射線治療後の局所再発が予後を決定する大きな因子であるため、臨床病理学的な所見に加えて、腫瘍の再発する可能性が治療前に予測できれば、治療法の決定への寄与は画期的である。さらに、二次癌発症の可能性などの問題も浮上してきた。そのために、本研究は、放射線耐性と局所再発に関する分子マーカーと、放射線療法の分子標的を探索することを最終目標とした入り口に当る基礎研究である。 我々は4年半以上にわたってヒト肝癌細胞株HepG2に毎日0.5Gyずつ2回X線照射を行い、1,600Gy以上の集積線量となった亜株を3系統樹立した。それらは変異原物質NMMGで一回処理した400株、α線を一回照射したA株、X線照射のみの89株である。現在までに明らかになった事象は以下である。 1.放射線感受性を検討する、今までのコロニー法では各亜株間に有意差はみられない。しかし、毎日2Gyずつ照射し、計60Gyに達した時点で89およびA株のみ増殖を続けているが他の細胞株は死滅した。現行のコロニー法では放射線耐性の記載に適切ではなく、新たなアッセイ法を考案中である。 2.コメットアッセイによる放射線による傷害DNAの修復能を検討したが、すべての細胞株間で、有意差を認めなかった。 3.染色体分析をGバンド法で行ったところ、長期にわたって照射されたにも拘わらず、親株に比して染色体異常は大きくなかった。 4.マイクロアレイCGHによって染色体の増幅・欠失を検討したところ、1pに増幅を認めた。 5.ディファレンシャルディスプレイ法によって長期被ばく3株と親株間で発現の異なる遺伝子を解析し2遺伝子をクローニングした。うち1遺伝子はCDDP耐性に関係した分子をコードしていた。 6.放射線被ばくによる細胞死の機構を観察したところ、老化による死が優勢であったが、400株は老化死に陥りにくいことが明らかとなった。 以上より、長期被ばくによって、ある一定線量以下では放射線耐性形質を獲得した細胞株を樹立した。しかし、耐性であることを示すために、現行法では不適切であり、新たな放射線感受性のアッセイ法を早急に提案する必要がある。
|
Research Products
(6 results)